スレイヤーズ長編小説
□遊郭の恋
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壱 出会い
――ここは、お江戸。花の遊郭。
色を求めてやってくる男達に、夢を見せるのが、仕事。
あたしは――ここで、一人の異人に出会った――
そう、ここは出入りが自由では無い、籠の中。
あたしに自由など無い。
好いてもいない男の相手をするのは、苦痛だったが、それで生き延びられるのならば、この混乱している世の中、まだ良い方なのかも知れない。
……苦界、と呼ばれる世界であっても。
ある日、あたしは置屋の主人に呼ばれ、上へ上がった。
「リナ――お前に、相手をしてもらいたい男がいるのだが」
「…………」
どうせ、また何処かの殿様や、役人だろう。
あたしは口を利くのも億劫で、虚ろな目で主人を見た。
「入ってください」
――すっ。
襖を開けて入ってきたのは、予想外の人物だった。
綺麗な金糸。
空を写し取ったかのような、澄んだ蒼。
……異人。
「お前の事を話したら、大層興味を持たれてな。金子もたんまりもらったんだ。
粗相の無いようにな。リナ」
「…………」
無言のあたしに手を差し出す、異人。
その手を取ることなく、あたしはさっさと自分の廓へ戻った。
後をついてきた異人は、中へ入ると興味深そうにきょろきょろと見回した。
そして。
「不思議な部屋だな。リナ……と言ったか? 疲れるだろう?」
「……は。何を……」