スレイヤーズ長編小説

□遊郭と異国の合間〜遊郭シリーズ番外編
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 異国へと旅立つ前。
 しなきゃいけない事があった。

 そうそれは、言葉の壁を取り払う事。つまり――

「お勉強?」
「ああ、リナはオレの国の言葉を知らないだろう? 日常会話が出来るくらいになっていた方が、なにかと便利だ」
「それもそうね……」
 まずは、挨拶から、だな。そういう彼の言葉に、頷く。
「じゃあ、『こんにちは』」
「こ……こにちわ」
「……もう一度、『こんにちは』」
「こんちわ」
「ちょっと違うな。
 ゆっくり言おうか。『こ・ん・に・ち・は』」
「こ・に・ち・わ」
 そうすると、彼は、何故か顔を赤くして、横を向いた。なんか、ぷるぷるしている。
「……ちょっと……まさか、笑ってるんじゃないでしょうね」
「い、いや違う」
「じゃあ、何よ?」
 ジト目で見るあたし。
「なんでもないさ。続けようか?」
「……むう」
 どうしても、簡単な単語なのに、うまく言えない。
 そして、彼の緩みきった笑顔が、なんだかなんとも……
「『こんにちは』」
「……こちわ」
「なんで、言葉の数が減って行くんだ?」
「し、知らないわよ!」
 ガウリイは笑顔を崩さない。どころか、ますます緩んでるのは気のせいだろうか。
「『こんにちは』」
「こんにちわ」
「おしいっ! 『わ』じゃなく『は』なんだよ。発音は……」
 ご丁寧にどう発音したら良いかも教えてくれる。
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