スレイヤーズ短編集

□ばすそると
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「なあ、リナ。それなんだ?」
 あたしが手にした小さな丸いケースを見て、ガウリイが尋ねる。
「ああ、これ?」
 ちょっと見やすいように上に掲げると、こくり、と頷いた。
「なんか、お前さん作ってたから。
 なんだそれ?」
「これは、バスソルトよ。
 要は入浴剤、ね。天然の塩に香油を混ぜたモノよ」
「へー……」
「香油はあまり手に入らないモノだし、塩も何処でもあるものじゃないから、ちょっとした贅沢ね」
 にっこり笑うと、ガウリイはまじまじと見つめた後、「そうなのかー」と呟いた。

「さってと! お風呂にしようかな♪」
 作ったバスソルトを手に立ち上がると、くいっ、と服を引っ張られた。
「……なによ?」
「オレも使ってみたい、それ」
「…………はあ!?」
 小さなケースに入ったバスソルトを指さし、「使えるんだろ、それ?」という。
「あんた、人の話聞いてなかったの? これは貴重なモノだから、ダメっ!」
 お湯に入れる為に蓋を開けると、すっきりとした柑橘系の中に、甘い匂いが混じる。
「…………じゃあ、一緒に入る。それなら、問題ないだろ?」
「――あるわ、ぼけぇっ!」
 危うくケースごと落としかけた。何を言い出すんだ、こいつは。
「やぁよっ! なんで一緒に……!」
 じーっと見つめるガウリイ。
 思いっきり見返すあたし。
 どのくらいそうしていただろうか。
 彼は、ふうっ、と息を吐くと、
「わかったよ……」
と降参した。――やった! あたしの勝ちっ!
 お湯はなんとかぬるくない。気持ちいい温度で保っていてくれてる。
 上機嫌でお風呂の方へ向かうあたしの耳に、「戻ってきたら、オレ的デザートあるよな?」と、不吉な言葉が聞こえてきたが……
 うん、どうやって脱出しようか、お風呂の中で悩むはめになるのだった。




fin.

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