スレイヤーズ短編集
□この子、猫の子
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昨日から急に暖かくなって、春めいてきた今日。あたし達は、いつもの様に旅をしていた。
何処へ行く、とも決めていない、気ままな旅。ゼフィーリアを出てから、数年。あたし達の関係も微妙に変わってきたこの頃。
アメリアに言わせたら、「リナさん達にも春が来たんですね!」なーんて、目を輝かせて言われそうな、そんな関係である。
……絶対、人前じゃそんな素振り、見せないけど。
んー、それにしても、お日様ぽかぽかしてて、気持ちいい。
何処かに座って日向ぼっこでもしたいくらいだ。
「お前って、猫みたいだよな」
伸びをしたあたしに、ガウリイ。
「なによ、急に」
「いや、日向ぼっこしたそうだったから」
……相変わらず、察しが良い。
「まあね。でも、そんな場所ないでしょ?」
んー……とガウリイはきょろきょろしていたが、ふと思いついた様に、近くの木の下に歩いていった。
「……そこ、日陰じゃない。
まだ、今の時季には寒いわよ」
が、彼はお構いなしに座る。
「こいつが居るんだから、大丈夫だろ」
その手の中には、小さな子猫が居た。
にゃーん。
意外としっかりした鳴き声。
野良にしては人懐っこい。誰かが餌でもやっているのだろうか。よく見れば毛並みも艶やかだ。
手招きするガウリイ。
まあ、いいか。
そう思って彼のそばまで行くと。
ぐいっ!
「わ……」
にゃっ!
すぽっ! とガウリイの腕の中に収まった。