スレイヤーズ短編集
□太陽と氷の世界
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――キラキラした世界。
その中心に、微笑んで。
リナは両手を宙に差し伸べ、空を仰いでいた。
◇
その日は、いつもよりもとてつもなく冷え込んだ日で、オレでさえ寒さにめげそうになりかけていた。
リナの状態がどんなものかは、説明いらないだろう。
既に身動きを取るのも不可能らしく、ベッドから出てこない。
普段なら、雪だるまのような格好でも出てくるのだが……冬眠中の動物のように、潜ったまま顔すら見せてくれない。
まあ、この寒さじゃあなぁ……
それでも、食事を摂らないのは、身体に悪い。
「リナー?」
…………返事が無い。
「おーい。なにか食わんと、余計に寒いだろう?
スープか何か温かいモノもらってくるから、食べた方がいい」
「…………やだ」
少しくぐもった声で、小さく返事が聞こえた。
「寒いんなら、布団の上でもいいから。オレが背中にくっついていれば、後ろはカバー出来るだろ?」
「…………うー……」
もぞもぞと動くと、少しだけ顔を出す。
暖炉の火はかなり前から部屋を暖めているから、そんなに寒くはないはずだ。
オレはにっこりと笑い、
「じゃあ、待ってろよ?」
と、布団の上からリナの頭をぽふぽふとして、階下へと降りていった。