スレイヤーズ長編小説
□異国の土地〜遊郭の恋・続編
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1 初めての異国
ざざあぁぁぁぁぁ……
潮風が肌に心地よい。
着慣れない『ドレス』というモノを着て、船の上に立つあたしに、お天道様は優しく照りつけた。
仄暗い遊郭の灯りしか見てこなかった時間が長すぎて、久々の眩しさは気分を高揚させた。
「リナ」
「ガウリイ」
外に出てきた彼の名を呼び、振り返る。
彼はお天道様に負けない笑顔を見せ、
「動きにくくはないか?」
「平気。……後、どのくらい?」
「もうじきだ。ほら――あそこに見える島。
あれが、オレの故郷だ」
気をつけて、とガウリイが先に降りて、手を差し出す。
ドレスを持ち上げて降りようとしたら、失敗したらしい。
「きゃっ……」
「おっと」
彼の厚い胸板に顔をぶつけた。
痛い。
「大丈夫か?」
「う、うん」
「ちょっと額が赤くなったな。すまん」
「謝る事じゃないでしょ?」
抱きかかえられて、船から降りた。
「ありがとう」
「どういたしまして、お姫様」
「あたし、姫って柄じゃ無いわ」
いや、と彼。
「彼処でのリナは、誰より凛としていて、気高くて。――姫、そのものだった」