短い話

□雨雨降れ降れ
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朝はあんなに晴れてたくせに、なにこれ。



止むまで待とうかと思いここに立っているんだけれども…ザーザーと降る雨の勢いは衰えるどころか増している気さえする


傘がないわけじゃない。折りたたみが一本、教室の自分の机の横に掛けてあるんだけれど。


(取りに行くの面倒だなー…)


そんな思考が邪魔をしてかれこれ30分はここにいる。


こんなことなら最初にここに着いたときに傘を取りに戻っていれば、今頃は電車に乗って音楽でも聴いて…


なんだか今更取りに行くのも癪に思えて、これ以上雨が強くならないうちにと足を踏み出、そうとしたところを誰かに呼び止められた。


「あれ、傘ないの?」


「上村君…」


見るとそこには委員会で一緒の上村君が立っていた。


「傘ないっていうか…あるにはあるっていうか…」


「壊れたとか?」


「いや、そうじゃなくて。学校に置いてきちゃって…」


「あー…それでこんな大して雨が凌げない木の下にいるわけか」


「それはつまりわたしを馬鹿にしているのですかねぇ」


「んー…7割は」


「…じゃああと3割は?」


「ー…心配?」


「…なんで疑問形?」


「なんとなく」


なんとなくってなんだよ、とは思ったけど黙っていたら上村君はすっと傘をわたしに傾けてきた


「…なに?水滴こっちに垂れてんだけど」


「あー…入る?」


え、なんて間抜けな声を出してから上村君の顔を確認するけれど、上村君はどこか向こうの方を向いていて


「ほぅ…これは…つまり…相合い傘ってやつをしろと?」


「や、あの、嫌だったら別にいいんだぞ。ただその白いワイシャツがどーなってもいーんならな」
(てか既に透けてんだよっ!!気づけよっ!!そして隠せよっ!!)


「あー……じゃあ誠に不本意ではあるが…よろしく」


「なんだその嫌そうな声」


「いや、全然そんな〜」




なんやかんや言いながらも駅までわたしと相合い傘でやってきた上村君の肩は濡れていて、わたしの肩があまり濡れてないところを見るとどうやら気をつかってくれたようだった。



「ありがと」


「は…なにが」




(あめあめ)(ふれふれ)



ー…


意味が分からない+全然ベタな感じにならない


あ、女の子は実は…例のあの子です

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