短い話

□独りでいると考えること
1ページ/1ページ






1人で映画に行くことなんて、わたしにとっては何でもないこと。別に寂しいだとか恥ずかしいだとかいう感情は全然ないし、寧ろ1人の方が楽でいい。


今日もまた、長めの映画を見終わって、やけにすっきりとした気分で映画館を後にした。

丁度人通りの多い時間で、学校帰りの小学生やら中学生やら高校生やらがそれぞれ何人かの集団を作って歩いている。そんな中、たった1人で歩くわたし。

例えば、今のこの道を歩くのと、誰もいない暗い道を歩くことどちらか選べと言われたならば、わたしは絶対に後者を選ぶだろう。

わたしは1人が好きだ。
誰にも干渉せず、干渉されない。そんな世界があればいいのになんて、有り得ないことを考えながらコツコツと靴の音をコンクリートに響かせながら歩く。

少し歩くと、前から男が1人歩いてきていて、咄嗟に視線を足先へと移動させる。知った顔のようにも見えたけど、こちらから声を掛ける気などない、が心の中では「元気?」だとか「部活どう?」なんて予行練習がなされていて、話しかけられる準備は万端だった。のに、彼は何も言わずにわたしの横を通り過ぎた。

無意識に立ち止まるわたしの足と、遠ざかっていく彼の足音。少し、本当に少しだけ切ない気持ちになりながら、また足音を響かせはじめる。


1人が好き、本当はそんなのただの強がりでしかなくて、言い訳でしかなくて。

ざわざわとうるさい通りで1人、うずくまって声を殺して、コンクリートに小さなしみを作った。











[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ