ぶっく2
□オレンジ色ブランコ
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オレンジ色に染まる公園。ブランコを揺らしている翔也を見ていたら、ふと口をついて出た言葉。
「翔也ってさ、好きな人とかいるの?」
「は?」
いきなりのわたしの質問に翔也は、ザッと砂をならしてブランコを止めて怪訝そうな顔を向けた。
けれども本音を言えば、驚いているのはわたしの方だ。
そんなこと、全然言うつもりなんて無かった…かと言って気にならない訳じゃない。寧ろ聞きたかったけど今まで聞けなかった質問なんだけど。
「そーゆー史恵はどうなの?」
「え?」
「いるの?好きな奴」
「えっと、」
自分の顔が赤くなるのが分かる。きっとそれはオレンジの光に紛れて気づかれなかったけれど、明らかに慌てるわたしを見て、翔也がにやりと笑った。
「マジかよ。え、誰?俺が知ってるやつ?」
「さ、さぁね〜。それより翔也はいるの!?」
「史恵が言ったら言う」
「じゃあわたしは翔也が言ったら言うよ」
「…ホントだな?」
う、と一瞬言葉につまるわたしを見てニヤリと笑う翔也。完全にノせられた。でも今更やっぱ無理、とは言えなくて、仕方なく頷いた。
再びブランコをこぎだした翔也は、少しの間なにも話そうとしなくて、今更ながら、そういえば翔也に好きな人がいるってことだよね、と自覚すれば大きな不安と小さな期待で鼓動が早まった。
ザッと砂が擦れる音が聞こえる。翔也は下を向いていた。
「…これ聞いても、俺ら今まで通りだよな?」
「……どういうこと?」
かすれた声しか出ない。嫌な予感がした。
「…俺、彩乃が好きなんだよ」
血の気が引いた。
だって、彩乃は、わたしの、ーーお姉ちゃん、だから。
「なんかよく分かんないけどさ、気づいたら好きになってたっつーか…」
喉のところに何かがつまって声が出ない。
え、なに?どういうこと?なんで?なんて言葉がぐるぐる頭の中を回って、乗り物酔いした時みたいに気持ち悪くなった。
「あ、お前っ!!絶対彩乃に言うなよ!?」
顔を赤くしながら慌てたように翔也が言う。
…翔也の照れた顔なんて初めて見た。
「そ…それよりお前はどーなんだよっ!!」
「わたし…は、」
わたしは、気づいたら翔也が好きで、幼なじみの特権でこーやって2人で一緒に帰ったり出来るのが嬉しくて、…それだけで、
「……残念でしたーっ!!そーんな人いませーんっ!!」
「はぁ!?」
無理やり笑顔といつもの調子を引っ張り出した。
「ぷっぷぅ〜翔也騙されてやんの」
「て…テメェ!!」
「お姉ちゃんに言っちゃおっかな〜」
「こらっ!!おい、ふざけんなっ!!待てっ!!」
「いやぷ〜」
わたしがこの気持ちを伝えることでこの関係が壊れるとするなら
(…このままでいたい、から)
オレンジ色ブランコ
(ごめんね、その恋)(応援出来そうにないや)
ー…
あへぇ。長くなった