ぶっく2

□オレンジ色ブランコ
1ページ/1ページ





オレンジ色に染まる公園。ブランコを揺らしている翔也を見ていたら、ふと口をついて出た言葉。


「翔也ってさ、好きな人とかいるの?」

「は?」


いきなりのわたしの質問に翔也は、ザッと砂をならしてブランコを止めて怪訝そうな顔を向けた。

けれども本音を言えば、驚いているのはわたしの方だ。
そんなこと、全然言うつもりなんて無かった…かと言って気にならない訳じゃない。寧ろ聞きたかったけど今まで聞けなかった質問なんだけど。


「そーゆー史恵はどうなの?」

「え?」

「いるの?好きな奴」

「えっと、」


自分の顔が赤くなるのが分かる。きっとそれはオレンジの光に紛れて気づかれなかったけれど、明らかに慌てるわたしを見て、翔也がにやりと笑った。


「マジかよ。え、誰?俺が知ってるやつ?」

「さ、さぁね〜。それより翔也はいるの!?」

「史恵が言ったら言う」

「じゃあわたしは翔也が言ったら言うよ」

「…ホントだな?」


う、と一瞬言葉につまるわたしを見てニヤリと笑う翔也。完全にノせられた。でも今更やっぱ無理、とは言えなくて、仕方なく頷いた。

再びブランコをこぎだした翔也は、少しの間なにも話そうとしなくて、今更ながら、そういえば翔也に好きな人がいるってことだよね、と自覚すれば大きな不安と小さな期待で鼓動が早まった。


ザッと砂が擦れる音が聞こえる。翔也は下を向いていた。


「…これ聞いても、俺ら今まで通りだよな?」

「……どういうこと?」


かすれた声しか出ない。嫌な予感がした。


「…俺、彩乃が好きなんだよ」


血の気が引いた。
だって、彩乃は、わたしの、ーーお姉ちゃん、だから。


「なんかよく分かんないけどさ、気づいたら好きになってたっつーか…」


喉のところに何かがつまって声が出ない。
え、なに?どういうこと?なんで?なんて言葉がぐるぐる頭の中を回って、乗り物酔いした時みたいに気持ち悪くなった。


「あ、お前っ!!絶対彩乃に言うなよ!?」


顔を赤くしながら慌てたように翔也が言う。
…翔也の照れた顔なんて初めて見た。


「そ…それよりお前はどーなんだよっ!!」

「わたし…は、」


わたしは、気づいたら翔也が好きで、幼なじみの特権でこーやって2人で一緒に帰ったり出来るのが嬉しくて、…それだけで、


「……残念でしたーっ!!そーんな人いませーんっ!!」

「はぁ!?」


無理やり笑顔といつもの調子を引っ張り出した。


「ぷっぷぅ〜翔也騙されてやんの」

「て…テメェ!!」

「お姉ちゃんに言っちゃおっかな〜」

「こらっ!!おい、ふざけんなっ!!待てっ!!」

「いやぷ〜」


わたしがこの気持ちを伝えることでこの関係が壊れるとするなら



(…このままでいたい、から)





オレンジ色ブランコ
(ごめんね、その恋)(応援出来そうにないや)



ー…


あへぇ。長くなった

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ