ぶっく2
□湿度100%
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じめっとした空気が体にまとわりついて不快だった。歩く度に執拗に鳴る、体育館シューズのキュッキュッという音もいつもは嫌で、でも今はそんなものは気にしていられなくて。
「――山崎、」
わたしの声が、少しだけ響く。キュッという音をたてながら、わたしは山崎の後ろに立ち止まった。
それから数分間、わたしも山崎も一言も話さない。動くこともなくただ立っていた私にか、それとも自分にか、山崎の背中が突然ぽつりと呟いた。
「…あー…終わっちまった」
今まで聞いたことがないくらいの、悔しそうな、寂しそうな声。
「…ごめん。勝つって言ったのに」
しんとした体育館に山崎の声だけが響いて、一層物悲しげに聞こえる。
わたしは何も言わずに…何も言えずにその場にただ立っていた。
「…ホントごめん、」
「…いいよ、もう」
「俺のせいで、」
「いいから。」
「でも、」
「…今日はみんないつも以上に頑張ってたじゃん」
「…うん」
「山崎だってめっちゃ動いてたじゃん」
「…うん」
「調子も良くてさ、」
「…うん」
「頑張ってたよ、みんな」
「…うん、でも、」
でも負けた。
ぽつりと山崎の背中が言う。その言葉がいやに響いて、じめっとした空気と共にわたしにまとわりつく。それはきっと、山崎も同じ。
「あー…あ゙ーっ!!」
突然山崎が叫び出した。かと思うと息を吐くような声で
「悔しい、」
と呟いた。
湿度100%
(飽和、)(結露。)
ー…
だからなに、ってゆーね。
まとまらないなー…