ぶっく2
□風邪
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目が覚めたらいやにだるかった。どうやら熱が出たらしい。
らしい、というのはこの家に体温計がなくて熱が計れないからだ。
「ゔー…」
意味もなく声を出してみる。そういえば一人暮らしになってから初めてかも、病気なんて。
ついでにこの部屋に昼間1人でいるのも久し振りだ。大概彼の家に遊びに行ってはごろごろしていた。
(半同棲ってこういうことなのかな?)
(てゆーか…ちょっと迷惑だったかも…)
そこまで考えてから、はっと思い手元の携帯を開いた。
「…11時か…」
体中がだるいし頭も痛いし熱あるし(多分)…今日はサボっちゃおっかな、なんて考えながら布団に潜り込む。と、申し訳なさそうに小さく、わたしのお腹が鳴った。
「…お腹減った、」
でも布団から抜け出す気にはなれなくて、とりあえず寝とけばなんとかなるだろ、なんて事を考えながら熱い瞼を閉じた。
ー…
…〜お、ねっ、がーい、たっ
携帯の着信音にふと目を覚ます。まだぼーっとしている頭で、寝る前よりもだるいしもしかして熱上がったかもなんて考えながら電話に出た。
「ん゙んっ、ん゙、…あ゙ー…ん゙っ、もしもし?」
喉の調子も悪くなっていた。やけに痰が絡む。
『もしもし、俺だけど…おい、なんか大丈夫?』
その瞬間、ついさっきまで体がだるくて布団から出れなかった人とは思えない速さで、ばっ、とベットの上で正座をした。
「わ、え、なんで?」
『それこっちのセリフ。講義出てねーし、メール返さねーし、電話も全然出なかったし…』
「ごめ…気づいてなかった。てへっ」
『てへっじゃねーよ。なに、風邪?』
「ん…どうだろ。喉痛くて、頭も痛くて、体がだるくて、熱もありそうだった」
『風邪じゃん。てか、だった、って?治ったの?』
「なんかね、電話出たら辛くなくなった。へへっ」
『…ふーん』
「あ、それよりさ、」
『ん?』
「なんかあたし、いっつも休みの日とか遊びに行ってるじゃん?」
『どこに?』
「あなた様のお宅に」
『あぁ…。んで?なんか忘れ物でもした?』
「いや、違くて、なんかそれが半同棲なのかなって思った」
『…はぁ、そりゃまたなんでこのタイミングで』
「なんか、部屋に1人って久し振りだから」
『お、寂しいのか』
「いや大丈夫。1人を満喫してる」
『…ふーん?』
「……」
『……』
「…寂しい、です」
『うん。…だから?』
「だから…今からそっち行ってもいい?」
『…はっ!?おま、来んなっ!!』
「えー…寂しい」
『はぁ…。ここはさ、俺に来てって言うとこじゃん』
「……でも、…いいの?」
『おぅ、てかもう向かってるっつーの。なんか欲しい物は?』
「んっとね、体温計」
『おぅ』
「あとね、お腹減った」
『食いもんだな?ゼリーとか?』
「なんでもいい」
『分かった。じゃ、』
「あ、ちょっと待って」
『ん?』
「30分後…来てくれるかなっ?」
『いいともーーっ!!…てか15分で行ってやるよ』
「無理じゃない?」
『んだとコラ』
(あ、ちょ、待って、部屋散らかってる。来ないで)(もう着いた)(え!?は?早っ!!)
ー…
ここにターッチ