ぶっく2

□雨と君と傘と
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新しい傘を買った。オレンジ色の傘。それだけのことで、いつもは憂鬱なだけの雨が待ち通しくなる。


次の日、示し合わせたみたいに朝から雨。だからわたしは気分がよくて、灰色の雲を消し去るようにオレンジ色の傘を広げて、ときどき回したりなんかして。


放課後、下駄箱でばったりと彼に会った。真っ黒な傘の中に真っ白なシャツの彼は、当然わたしなんかに声をかけることもなくわたしの少し手前を歩いている。


ポツポツと軽快な音をたてる雨のせいか、はたまた新しい傘のせいなのか、別に話ができたわけでもないのに、わたしは更に機嫌が良くなる。



くるくると傘を回しながら彼の背中を見つめる。


それから灰色の空を見て、オレンジ色の傘を見て、紫色の紫陽花を見て、紺色のスカートを見て。

黒の革靴まで視線を移動したあとにもう一度、黒い傘と、白いシャツへと視線を動かせば、彼はやっぱりどこか、輝いて見えた。







雨と君と傘と
(わたしも入れて、)(なーんてね。)




ー…


新しい傘を買いました。

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