ぶっく2
□意地悪な神様
1ページ/1ページ
「先生ぇー席替えしようぜー」
「いいよー」
ロングホームルームの時間、クラスのとある男子の一言で席替えをすることになった。
無意識に淳平の方へと目をむける。彼は男子に囲まれていて見えないのだけれど。
諦めて視線を元に戻して、今度は耳をすませる。時折聞こえる彼の笑い声やツッコミなんかにいちいちきゅんきゅんしていたら、いつの間にかわたしがくじを引く順番になっていた。
(淳平の隣、なれたらいいな)(…なんて)
そんな、まるで乙女みたいなことを考えながらくじを引く。16番。窓側の後ろから2番目。場所的には悪くない。
淳平はどこだったんだろうと思いながら友達と話をする。
そこでわたしは、聞きたくないことを聞くことになる。
「ねぇ、東って最近篠崎さんと一緒に下校してるんだって。悠里知ってた?」
「……え、」
一瞬動きが止まる。友達はそんなわたしの様子に何か悟ったのか、「あ、でもたまたまかもだし」とフォローをいれてくる。絶対にわたしが淳平を好きだってバレた。でも今は、それどころじゃなくて。
「席移動しろよー」
担任の声で現実に戻される。のろのろと机を移動させ、嘘でしょと頭の中で繰り返していたとき、隣から声がした。
「あ、隣後藤じゃん」
よろしく、なんて言って笑うその声が誰のものかなんて、見なくても分かる。だって、今までずっといろんな雑音の中から拾ってきた、彼の声、だから。
「……なんだー淳平かー。てゆーかあんた、彼女出来たの?」
出来るだけ普通に、なんでもない感じで尋ねる。でも、淳平の顔は見れなくて、ただずっと、そんなのいねーよ、って笑ってくれるのを期待して。
「え、何で知ってんの」
目の前が真っ暗になった気がした。
意地悪な神様
(今はちっとも嬉しくない)(隣の席)
ー…
東はモテるんだろうなと思い。