ぶっく3

□微熱を放って影を揺らして
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 蝉の声が遠くで聞こえている。纏わりつく空気はどこかベタベタとして何となく不快だけれども、まぁこの空間はそう悪くはないかな、と一人思う。



 この季節になると妙に浮いた気分になるのは何故だろうか。蝉の聲は確かに私に何かを急いているようで、なんだかじっとしていられない気分になってくる。かと言ってやることはないし(やらなければならないことは沢山あるが)そこまで行動的な思考でもないので結局なにもしないのだけれど。



 空が蒼い。わたしの肌は微かに熱を放っている。蝉は未だに空っぽの部屋で聞こえる蛍光灯の、少し低くしたような音で鳴いている。時折吹き抜ける風がゆらゆらと木陰を揺らしているのが見えた。



「暑いね」



応える声はない。
それはそうだろう。だって、この部屋には私一人しかいないのだから。




 たまにふと、何かもどうでも良くなってしまうときがある。勉強も、友達も、将来のことも、全てがどうでもよくなって、ただふと、消えてしまいたくなるときが、ある。




「夏だなー……」


ぽつりと呟いたその声に、応えるものはやはりいない。







微熱を放って影を揺らして
(思考をくるくる)(回したりして)


ー…

蝉の声を聞いていると、夏だなーと思います



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