ぶっく3

□じゃあ、夕方会いに行くから。
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まだ寒い二月の終わり。駅のホームで1人。19時03分。電車が来るまでまだ30分以上もあるのに、……あぁ、なにやってるんだろう。なんて。


寒い。やっぱり待合室で待っていればよかった。

二時間以上の遅刻と、これからのことで頭が重い。あぁ、ホントにわたし、なにやってるんだろう。



イヤフォンから流れているのは最近知った少し悲しい歌。その曲だけが繰り返し流れて、周囲の音を覆いつくして、耳を塞いで。



こんな時に、考えるのは。



あぁ、寒いなぁ。とか、マフラー巻いてきて良かったな。とか、




……とか。




答えはもう出ていて。面倒な事が嫌いなわたしにそれは簡単なことのはずなのに。なんで、こんなに。




マフラーに埋もれた唇を少し噛む。そうしないと、余計なことを考えてしまいそうで。



自分で選びとった答えに、後悔はない。それが直感でも、悩み抜いた答えでも。何が正解なんて分からないから、だから今回は、せめて、一番無難な、一番楽な答えを解答欄に書いて、なのにわたしはまだ、その問題から次に進めないでいる。これでいいの、なんて、そんなこと考え出したらキリがなくなってしまうのに。







相変わらずホームに人はない。風がわたしの体温を少しずつ奪って、かじかんだ両手はきっと赤くなっているのだろう。




いつの日か、自分の望んでいるものが分からなくなった。好きなものを好きだと言うことがたまらなく苦手になった。そうやって捨てることだけ上手くなった気になって、でもやっぱりだめだったななんて。








こんなこと。








電車の到着を知らせるアナウンスがホームに響く。どうか泣かないようにと、それだけを心に決めてわたしは立ち上がった。







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