私と彼

□バレー部の私と
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「僕もういやだ〜死にたい」


またかよ、と溜め息をつくと「今度こそ本気だからねっ」と軽く睨まれる(ま、全然怖くないけど)

「それ前も言ってたでしょ」


「ぅぐっ」という潰れた声を無視して数秒。


「…だってさ」

「今回は何?」

「…体育でさ、」

「うん」

「…男子今日だけバレーやったんだけどさ、」

「へーいいなバレー。んで?」

「…東にさ、」

「誰その人」

「あ、ほら、生徒会長」

「あーはいはい…で?」

「でさー、思いっっきりアタックしてきたんだよっ!!」


何を思ったか目を見開いてガタリという音をたててわたしに顔を近づけてきた。


「近いんだけど」

「あ、え、」


「ごめん、」と小さく呟く彼がもとの位置に戻ったのを確認してから「で?」と先を促す。


「いや、もう死ぬかと思ったよ」

「そのまま死んじゃえれば良かったのにね」

「ヒドいよっ!!死にたくないよ、僕っ!!」

「今さっき死にたいって言ってたじゃん」

「それはー…別の話です」

「なんじゃそりゃっ!!」

勢いよくツッコんでからまじまじと顔を覗く。


「な…何?」

「いや…そんな凄い勢いのアタックが当たった割には顔に痣とか出来てないじゃん」

「あー…それは別に」

「別に、何?まさか避けたとか?いやいやあんたにそれは無理でしょ」

「し…失礼だなっ!!僕だって…」

「僕だって…?え、なに?マジで避けれたの?」

「いや、まぁ、うん」


曖昧そうな答えは少し信用し難いけどもとりあえず「凄いじゃん」と言っておく。


「いや、凄いっていうか…。正確には避けたっていうか避けられたっていうか…」

「どゆこと?」

「いや、だから、あの…
顔の、横を、ボールが、その…」

「…まさか、顔の横通っていっただけ?」


こくりと頷かれる。そのまま数秒。


「…全然凄くないじゃん」

「えっ!?
いや、でも、あれはっ、少しでも動いてたら、死んでたかもしれないな〜」

「…何が言いたいの」

「や、だから…、僕があえて動かなかったからこその…そのー…」

「ただ動けなかっただけでしょ」

「…だってー…」

「だって、なに?」

「…全然ボールとれないんだもん」


ガックリとうなだれた頭のつむじに向かって「特訓する?」と問いかけてみる。途端に上げられた顔には「はぁ!?」という少し批判的な表情。


「なにその顔。嫌なの?」

「え、いや、あの、嫌って言うか…あの、ホラ、そんな時間もないし」

「そんな遠慮しなくてもいいよ、特訓手伝ってあげる。わたしバレー部だしさ、それにアンタとわたしの仲でしょ」

「いや〜…あの、」

「なんで渋るの。会長見返してやろうよ」

「無理だよ…東、運動神経凄いし…」

「なにそれ」

「それに東って結構いいヤツでさ…」

「…は」

「今日もそのあと直ぐに『すまん、大丈夫かー?』って…僕、当たってないのに声かけてくれてさ」

「…いい人じゃん」

「でしょ?」

「でも、それとこれとは話が別っ!!」

それでもまだ渋い顔をするので「…嫌なの?」と言うと「まさかっ!!」という言葉が返ってくる(お、即答じゃん)


「ならいいでしょ」


「いや、でもホラ、やっぱ女子と男子。球の速さとか違うし…特訓は男子に頼むからいいよ」


にへらと笑って放たれた言葉に闘争心が燃えた。








(体育館、行こっか)




ー…後書き

男の子はなんとか女の子との特訓は阻止したかったんです
でも女の子としては自分バレー部なのに弱い的なこと言われたぞ、オイ。みたいな気持ち




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