ぶっく2

□とある朝の出来事
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「じゃあね、」


 その日の早朝、わたしは二日間私のアパートに滞在した兄を見送った。バスの窓からこちらを見て少し微笑んでいる兄に小さく手を振り、来た道を引き返す。人はまばらにいる程度だ。澄んだ空気が心地よくて、私の気分は上々だ。


 これから毎朝早朝ランニングでもしようかしら――それが無理ならジョギングでもいいかもしれない。まぁ、どうせ長続きなんてしっこないんだけど。

 何をしても三日坊主で終わる自分のことは、自分が一番よく知っている。
とにかくわたしはこの空気を堪能しようと、のろのろ歩いていたのだ。するとふいに見慣れた後姿を見つけた。

 
 声をかけようか、どうしようか悩んだのちに、控えめに彼の名を呼んだ。澄んだ空気に私の声が響く。彼が振り向く。

 こんな時間になにしてるの、と尋ねると、そっちこそ、と返される。そんな単純な会話が嬉しくて、わたしの気分はさらによくなる。
どうやら彼は友人の家からの朝帰りのようだった。ねみぃ、と大きな欠伸をする彼を幸せで満ち溢れた目で見る。


どうしよう、嬉すぎて、にやけちゃう。


 じゃあ、俺こっちだから。そう言って手を振る彼にばいばい、と返すわたしの心は幸せでいっぱいなのだ。



【とある朝の出来事】

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