The little better place
□僕と私と貴方と貴女と…
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今が幸せと感じたときに
もう一度、私は笑う…
それが今の私に出来ること…
僕と私と貴方と貴女と…
「お誕生日おめでとうお母さん!」
「おめでとう母上!」
リアとアル、2人の我が子がカレンに抱き着いてくる。カレンはそれに「ありがとう」と返して2人の頭を撫でる
「おめでとう、カレン」
「ありがとう、ライ」
ライはカレンの額に唇を落とすと、それに擽ったそうに笑顔を浮かべるカレン。カレンの母はその様子をにこやかに見守っていた
「さぁ、ケーキの用意するから手伝ってリアちゃん」
「はい、お婆ちゃん」
「あっ、僕も!」
カレンの母によって取り出されたケーキには、ライの時と同様に名前が書かれていた。刺さっている蝋燭に火を点けると、今回はアルが電気を消した
「せーのっ」
リアが音戸をとり、皆で唄い出す
バースデートゥユー♪
そして唄い終わると同時に、カレンは蝋燭に息を吹き掛けて火を消し、火が消えると一斉に拍手が起こり、口々に「おめでとう!」をカレンを祝った
「みんな、ありがとう」
カレンが礼を述べると、ライはデジタルカメラを取り出した
「リア、アル。お母さんの隣に並んで?」
「はーい!」
「解りました!」
2人はカレンの両隣に来ると、今回はカレンの両肩に頭を乗せるように寄りかかった
「まぁ…確かに恥ずかしいわね?」
カレンが若干顔を赤く染める。その姿にライは「フフッ」と笑った
「さぁ、撮るよ?はい、ちーず」
ピピッ…パシャ
笑顔を見せる3人の姿を保存する。それを確認したカレンの母は「今度は私が撮るから、ライさんはカレンの隣に並んで?」と言う
ライは「じゃあお願いします」と一礼し、カメラを渡すと、あえてカレンの隣ではなく、後ろからカレンを抱き締めるように手を回して顔を覗かせた
「ちょっと、ライ////」
「いいじゃないか?こういう時くらいはさ?」
「アハハ」と笑うライに、カレンは「……もう」と観念したかのようにカメラに目を向けた
「じゃあ、撮るわね?」
「はい」
ピピッ…パシャ
機械音をならし、2人の姿を記録するカメラ。画面に写る2人の姿を、カレンの母は柔らかい笑顔で見つめた
「お母さん」
そんな母親をカレンは呼ぶ。カレンへ目を向けた母親は、「なに?」と首を傾げた
「次は…お母さんと一緒に撮りたい」
「えっ?…私は…」
「僕からもお願いです。一緒に撮ってください」
カレンとライに頼まれるも、答えに詰まる母親。だが
「お婆ちゃん」
「叔母上」
「あっ、ちょっと…」
2人の孫に引っ張られるように、ライが用意した椅子に座らされたカレンの母親。そして、手に温もりを感じ、そこへ目をやるとカレンの手に握られていた
カレンへ目を向けると、「お母さんとの写真、そんなに無かったから…」と申し訳なさそうな顔のカレンが視界に入る
「あんな事があったからお母さんとの思い出もそんなにないし…私の我が儘だけど、聞いてほしいの…」
カレンの言葉に、母親は涙が溢れそうになったが、それをぐっと堪えて笑顔を見せた
「解ったわ」
「じゃあ、撮りますよ?」
「はい、お願いね?」
母親はカレンのをそっと握り返した
ピピッ…パシャ
カメラから放たれたフラッシュが2人を包み混む。その光に包まれ、母親はあの日の事を思い出した
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「おいカレン!写真撮るぞ?」
「あっ、待ってよ!」
カメラを三脚に立て、写真を撮る準備をしていたナオトが、初めて近くで見た富士山に目を輝かせていたカレンに呼び掛けた
「カレン、転んで怪我しないようにね?」
「うん!」
「ほら、急げよ!」
慌てて駆け寄ってくるカレン。カメラのタイマーをセットして隣に並んだナオト。そして…
パシャ
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「はい、撮れましたよ……っ、どうしました?」
涙を流していた母親に、ライは気付いた
「お母さん?」
「違うの…なんだか…嬉しくって……」
自分は決して良い母親じゃなかったかも知れない。でも、こうして再び娘と暮らせて、そして孫の元気な姿を見れて…
これほど幸せなことはもう二度と無いはずだ
心からそう思う
「…カレン」
「なに?」
母親は涙ぐみながら、娘へ顔を向ける
「あなたは、ちゃんと幸せになってね?」
「……うん!」
カレンは母親の言葉に力強く頷いた。それに笑顔で頷いた母親はカレンをそっと抱き締める。カレンはその温かな温もりを、目を閉じて確りと感じていた
こうして、また新しく写真が飾られる
柔らかな笑顔を浮かべた2人の写真……その握られた手には、2人の確かな絆が写っていた…
『お母さん!』
『なに、カレン?』
『あのね…大好きだよ!』
『フフッ…私も、大好きよ、カレン』
fin.