眼鏡少女

□The slip of the tongue of the catching a cold boy. (風邪引き少年の失言)
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夢独特の少しぼんやりした声が響く。

ヴェールの向こうみたいにはっきりしない。

「気持ちよさそうじゃのう?」

立海のジャージでドリブルしてる。

気分はすごく爽やかだ。
でも高揚感はなくて、気持ちもぼんやりしてる。

場面が移り変わる。

誰かが俺を罵倒してる。
いや、これはブン太だ。

「お前最低だっ!!」

怒りを含んだ怒鳴り声。

俺じゃないのに。

あいつの嘘なのに。俺を信じてよ、嫌わないでよ。あんなに仲良かったじゃん。

あの日は確か…

「俺のバスケ、返してくれよ……」

倉庫で悔しくて泣いたんだ。

暗い倉庫にうずくまる俺を、見てる俺がいる。



俺は孤立していく。

「あんたなんか死んじゃえ」

猟奇的な笑みに囲まれ、袋叩き。

痛い、痛い。




最後は、一人ぼっち。

親の仇でも見るような眼差しの、かつての仲間が俺の背後でヒソヒソと悪口を言ってた。

誰も信じちゃくれなかったんだ。



「なんで…」

強くそう思った。

なんで俺はこんなことになったんだ。




…またあの夢か。

自分が声を出したのに気づいて目が覚めた。

ほんと、なんでだろうな。

何気ない青空がオレンジ色の夕暮れの光を浴びていた。

視界の180度が空でいっぱい。


けれど、こんな夢を見るくらいなら寝なければよかった。

早退扱いになったな、これは。


…起き上がって、片手で顔を覆う。

ため息が出た。



ほんとに最悪だ。



ふくらはぎや膝の古傷が軋む。

あのときの痛みを思い出して、口の中に苦味が広がった気がした。

深呼吸をして切り替えよう。

家に帰ろう。

気づけば夕方だ。

あんな夢を何時間も見てたのか。

最悪だ。

あぁ、スーパーに惣菜を買いに行かなきゃな。


タンクから飛び降りた。
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