眼鏡少女

□The slip of the tongue of the catching a cold boy. (風邪引き少年の失言)
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I refused it before it was refused.
(拒絶される前に拒絶した)



嫌われるくらいなら、自ら離れる。

俺はそうやって生きてきたんだ。




ボールとも、人間とも。

だから音楽に身も心も捧げてしまえば、頭からしがらみはすべて消えてしまうと思った。


親友に出会えたのも、生きていると実感出来たのもそれがきっかけなのは確かだった。


それに、目標にひた走ってたあの頃は楽しかった。


だから、忘れることなんて初めから無理だったんだ。



バッシュの音、スラムダンクの響き渡る音、開始ブザー。

ボールがすっぽりゴールインしたときの一瞬の静寂。

無限に感じられた輝く日々。


立海付中バスケ部エース兼テニス部アドバイザー。

肩書きに誇りを持ち、不可能なんてないと思ってたあの日々。

懐かしい。






そして、憎い。

かつてチームメイトだったあいつらとの思い出すべて、憎い。


だから音楽に転身し、すべて日本に置いていった。


しかし、あげく消えない雑念を振り払えなかった。



進級テストでのルニール老教授の言葉が蘇る。


「君の音楽は、美しい。甘やかで切なげなその音色は芸術的だ。そしてだからこそ、ありのままの姿でいなさい。音楽は嘘をつけない。混合物をすべて取り除いたその時は、私にその輝く音色を届けてくれ。」

最後に、俺の肩に触れて言った。



「JUST THE WAY YOU ARE」


ありのままの自分で、という老教授の懇願にすら聞こえるような言葉が、心を貫いた。


初めて、自分が音楽に対して中途半端であったと気づいた。


マシュー先生、ジェイク。

バスケへの道を照らしてくれてありがとう。

俺は俺なりにバスケをまた頑張ろうと思う。

壁に体当たりしてぶち壊して、自分が納得のいくまで。

不安や恐怖はまだ拭えていないけれど。

戦って、戦い続けるんだ。

頂点に…立つ!!



記憶とも戦う。

記憶は、こびりついて消えないままだ。

消えない傷だ。




大好きなバスケットボールから襲われる苦しみ。
誰も助けてくれなかった絶望。

後輩やよく知らない先輩の嘲笑、歪んだ顔。冷めた瞳。

彼らは俺が死んでも別に何とも思わない。

そう確信した時の恐怖。

いろんな方向からボールが激しく衝突する激痛。

たくさんのボールが激しくリバウンドして俺にぶつかる音。

頭にボールをぶつけられたときの激しくぶれた景色や舌をかんだ痛みさえ。

ずっとずっと鮮明なままだ。

もう仕方のないことだって、諦めはしてる。

ただ、精神面はそう簡単にはうまく行かない。

奴らの誰か一人にさえ会わなければ、崩れないだろうけど。



だから、過去を恨むよりもどこかの歌みたいに自分を変えてやろうと思う。


全部精算するつもりで、心機一転。

新しく設立されたばかりの誠凛高校に入学した。






(壊してしまいましょう)
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弱い自分は、もういらない。
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