眼鏡少女

□PLEASE GIVE ME YOUR LOVE
2ページ/18ページ

私は田舎に住んでいる。
いや、住んでいたというべきか。

空気と水と夜空の星の数、がまったく違う。

都会は、虚しい。

ともかく都会に着てしまったことは把握した。

そしてここは近くのビルよりも高いから、高層マンションなのだろう。

それに、かなり高い階だ。

そこまで理解してすぐドアを閉め、自分も玄関先に戻る。

正直、刺激が強かった。
ドアノブを捻るときには、好奇心で高まっていた心臓が、今は恐怖で騒ぎ回っている。

手には脂汗、すーっと背筋が冷えるのを感じて、ぶるりと鳥肌が立つ。



大都会に私一人。

ここがどこかも分からない。

家族は、この部屋の暗さからして誰もいなかった。

昔から気配には敏感だから、それは確かなことなのだ。

さらに、これは怪奇現象でもあるのだから、ここが平行世界や、異世界の可能性もあり得る。

ただ単に、タイムスリップなのか、ワールドトリップなのか、分からない。

未成年の私に保護者がいないのも問題だ。

この世界で生き抜くにはどうすればいいか、ほとほと検討もつかない。


ドアを閉めた今も車のクラクションや風を切る音が聞こえる。


一体なんなんだ。

私は確かに少し古いアパートに帰ってきた。

いつもの下校通路で、ぼんやり帰ってきたのだ。
よくよく見れば、私の家というよりここは私の部屋によく似ている。



近くのエレベーターで下に降りてみようか。

ここが何階かは分からないが、とにかくめちゃくちゃ高いのは分かる。


長時間同じ場所にいてもなにも始まらない。




エレベーターまで歩こうと、広めの通路の真ん中に立つ。


ドアを閉めるときに、ちらりと何かが見えた。

閉まりかけのドアをまたガッと勢いよく開き、思わず口を開けたまま固まった。

これは、私が修学旅行のために買ったコロコロだ。

いや、一回りも二回りもでかいそれが、2つある。



気がつけば自分がいつも出かけるときに持っているバッグは肩に掛かっている。

それに私服だ。

バッグを漁ってみたが
いつも出掛けるときに持ち合わせる荷物と変わりない。

財布には、いくら入っているんだか。どれだけ、持つのだろう。


あ、携帯だ。そこに救いを見たような気がして、私はすぐに携帯を開いた。

日付表示はない。ただ、時間はかいてある。深夜2時だ。

驚いた。明るいから2時だなんて思わなかったのだ。これが大都会か。

空がどす黒い。きっと地上の電光の所為だ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ