短編
□カラフル*キャンバス【下絵編】
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本当に、私の脳内で再生された声だった…?
そう思ってそろそろと首を横に回すと、ぽかんとした私の顔を映した橋本くんの瞳がそこにあった。
「…うひゃあッ!!」
驚いて飛び上がる私に、橋本くんはぼんやりとした顔で言った。
「…俺、今…何か言ってた…?」
どうやら寝言は覚えてないらしい。(当たり前か)
「ぅえ!? …ええええと、う、うん。言ってない、なんにも言ってないよッ!」
何故かかなりの挙動不審さでどもりつつ嘘八百を返してしまう私。
だだだ、だって!
言える訳ないじゃない!
まさか寝言で
『…棚井…好きだ…』
何て、言ってたような気がする、なんてぇぇ!!!
「…そっか、なら良かった…」
橋本くんはホッとしたように可愛く微笑むと、軽く伸びをした。
何となく、その顔がほんのり赤らんでいるように見えたのは…
多分、ただの私の願望。
――ああ、そっか。
そこでようやく、私は気付いた。
…私、橋本くんのことが、好きなんだ。
自覚したら恥ずかしくなり、私は誤魔化すように絵の具を塗り込んだ。
いつの間にか、『ちょっと気になる』から昇格していた私のこの想いを橋本くんが知るのは…
まだもう少し、先のこと…――。
《続く》