短編
□図書館恋愛譚。〜蜜編〜
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「お腹すいた…」
夕方の図書館。
読んでいた本と共に、机に突っ伏すと
「図書館ではお静かに」
ひとつ空席を挟んで隣に座る、友人兼片想い中の博人(ひろと)に素早く突っ込まれた。
「別にうるさくしてないし」
口を尖らせて小声で抗議する私。
「蜜の腹の音がうるさいの」
そんな私を見向きもせずに宣(のたま)う博人。
「…! お腹の音なんて鳴ってな――」
ぐうぅ〜
むきになって弁解しようとする私の意志を全く無視し、それは静かな図書館に鳴り響いた。
「…ほらな?」
意地悪な笑みで見下す博人。
恥ずかしくて悔しくて、私は俯いたまま無言で席を立った。