夢物語

□巧州国王伝記 肆
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「はぁ。」

「ため息つかない。
こっちも疲れる。」

「しかしだな…」

零咲と珀牙はそろって城壁を登りきった。
つまり、不法侵入である。

何の考えもなしに零咲が
「たのもー。」
なんて言ったものだから、当然門番は不審がり、門前払い。
それを癪に思ったので
「登ろう。」
発言にいたった。

(いつもつき合わされるのは俺だ…)

心の中で愚痴をこぼす。
もちろん、零咲には聞こえないが、ため息が漏れたのだ。

「仕方がないだろ。
入れてくれないんだから。」

「俺はお前の言い方に問題があったと思うがな。」

「過ぎたことは忘れよう。」

(ますます朔緋に似てきた…)

零咲は珀牙の心の内は知る由もなく、城内を見つめる。

師、つまり朔緋が言うには、
城がある町ならば、町の歴史が綴ってある書簡がどこかに眠っている。
と。

「歴史書って言ったら大抵蔵、だよな。」

「そうだろうな。
だが、50年前というのは比較的新しいぞ。」

「蔵あさってなかったら本格的に侵入しよう。」

「侵入に本格もなにもない。」

「結局はバレなきゃいいんだ。」

「あのな、今の巧は…」

「身分証明できない者に対して厳しいんだろ。」

「捕まったら…」

「この俺が、そんなヘマすると思う?」

自信あふれる顔。
それ以上珀牙は何も言わなかった。
延王との対決は、かなりの自信を零咲に与えたようである。

「さぁて、行ってきますか。」
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