夢物語

□巧州国王伝記 漆
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「蝕を起こすぞ。」

虚海の果て、そこに二人はいる。
闇の虚海に浮かび上がる金の髪。
この場には六太の護衛もいない。

危険すぎるために。

「いつでもどーぞ。」

「…やけくそ?」

「開き直った。
早くやれ。
自分の民から逃げた巧麒サマを迎えにさ。」

くすりと笑い、その笑顔に押されるように六太は蝕を起こした。





「…すっげ。」

目の前に広がる景色にただ呆然と立ち尽くす零咲。
虚海とは全く違うただ、青が広がる海。
白い岸。

「南の方に行くともっときれいな海があるんだ。」

「へぇ。」

見てみたいと単純に思ったが、今回の目的は巧麒の捜索。
遊びではない。

「かすかに麒麟の気配がするから、このあたりだとは思うんだ。」

「けど、気配が薄い?」

「薄い。
けど、あたり一面が麒麟の気配に覆われてる。
そんな感じ。」

「不思議なこともあるんだな。」

「だから、見つけられないんだ。」

「ふ〜ん。
前回見つけたのも六太だったよな?」

「ああ。」

「どこで見つけたんだ?」

「覚えてないんだ。
それに、もっと寒い地域だった気がする。」

「場所自体が違うのか?」

「うん。」

「じゃ前回を頼みの綱に探すのは無理か。
面倒なことになった。」

「…朔緋様はなんでお前をよこしたのかな。」

「師匠の考えを読むのは誰もできないと思う。」

「それもそっか。」

「それとさ、問題が一つあるんだけど。」

「ん?」

「世界が歪んでる。」

「え?」





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