夢物語

□巧州国王伝記 伍
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「玉葉様。」

「これは、巧麒。
どうなさった?」

巧麒が次の日最初にしたことは、碧珂玄君玉葉に会いに行くことである。

「黄海に行こうと思います。」

「使令とな。
行ってくるがよろしかろう。」

「で、灰火の説得を協力してほしいんです。」

「灰火はまれにみるほどの過保護ぶりじゃからのぅ。
確かに承った。
誰ぞ、灰火を呼んで参れ。」




久しぶりに降りてきた黄海。
上機嫌な巧麒の隣には不服そうな灰火がいる。

「広い道だね。」

「何人もの昇山者が作った道でしょう。」

「…ここでも血が流れたんだろうね。」

すっと地面を撫でた。

「…のどが乾いたな。」

そう言って持たされた水筒を逆さにしても、出てくるのは水滴だった。

「緊張されてずいぶん飲まれていましたから、汲んでまいります。
どうか動かれませんよう。」

巧麒はしっかり頷いた。



が。



「襲われたら仕方がないよね。」

全力疾走である。
木々の間を縫うように走り抜ける。
使令に降してしまえば早いのだが、そうするほどでもない小物なのだ。

【巧麒、足元!】

「あ。」

木の枝や、生い茂った葉によって視界が悪かった。

いつの間にか崖に来てしまっていたらしい。

足を、

踏み外してしまった…。
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