夢物語

□巧州国王伝記 第二章 壱
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新王が翠篁宮に入った時、誰もが平伏して迎え入れた。

シャランと歩くたびに鳴る簪。
黒い着物の中に艶やかな紫の髪。
左右の色の違う瞳の色。
真珠のごとき白い肌。
潤いを帯びた赤き唇。

美しき女王に、ほうと息をもらす人々。

大きな冠を与えられて傾く体。

その細い肩に一国は大きすぎるだろうと誰もが思う。



自分の姿を最大限に生かした余興。




「あのような方に一国が治められましょうか。」

「大層重荷となりましょうな。」

「天帝も酷なことをなさいますなぁ。」




「ってな話をおっさんたちしとったで。」

「へぇ。」

そう言う楼骸の表情は怒りに満ちていた。
対する噂されている本人は気分を害した様子はない。
むしろ思惑どおりとでも言うように満足げである。

「何でそんなに普通なん!?
舐められてんで!?」

「舐められるようにしてるんだから当然だろう?」

「はぁ?
姐さんがなめられるなんて許さへん!」

「お前なんでそんなに怒ってるわけ?」

「姐さんが起こらない訳がわからへん〜〜〜!!」

「楼骸五月蠅いですよ。」

「はい、すみませんでした。」

「ああ、洸麒。
その手に持ってるのは?」

「女官に頂きました。
焼き菓子です。」

「いいね、お茶にしよう。」

「ほんなら俺も〜。」

「ちゃんと3つ湯呑用意しましたよ。」

「麒麟が何してるんだ。」

「主上にさせるわけにはいきません。」

「他の奴がいるだろ。」

「主上の計画に支障をきたす恐れのある者を私が近付けるわけがないでしょう。」

「ああ、お前の判断能力は良いね。
そこの楼骸はどうも短気で頭が回らないから。」

「はうっ!
姐さん…わいは深く傷ついてもうた…
墓は庭の隅に」

「作らないよ。」

  がーん

そして部屋の隅でいじけるこの世界で最も恐れられる千変万化の妖魔。

「主上、あの鬱陶しいのどうにかしていただけませんか。」

「ちっ。
楼骸!」

「姐さん…!」

「鬱陶しいから他行っていじけろ。」

「あ、とどめさしましたね。」

「知らん。」





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