宇宙色の恋(新婚編)

□天使のキス 中編
1ページ/10ページ

ここは太陽系のはずれに存在する星『冥王星』…
ここ冥王星軌道にはケロロ達が地球防衛をする為に外敵の侵入を探知する3つの衛星
「シド」「ロモ」「ドロ」の一つ「シド」が装備されている。
そのシドに大きな黒い影が近づいていた…


「隊長、大変な事が起こったぜぇ」
クルルに呼ばれたケロロは中央作戦室で報告を受けていた。
「一時間ほど前に冥王星に配置してあった『シド』からの通信が途絶えやがった」
「故障の類は考えられねえ、もしかすると…」
「何者かが故意にシドを破壊した…という事でありますか?」
「おそらく」
クルルの顔はいつになく真剣な表情である、ケロロはこれが深刻な状況である事を悟った。

クルルの報告を受けたケロロはじっと考え事をしていたが
「長距離レーダーや他の探査衛星で調べてみたらどうでありますか?」
ケロロの提案にクルルは首を横に振って答えた。
「それじゃ、はっきりとは確認できねえ、まず長距離レーダーじゃ無理だ」
「それに探査衛星じゃ、敵対する何者かであった場合やられに行くようなものだ」
「誰かが直接偵察に行く必要があるぜ」
ケロロはモニターに映し出されている冥王星を見つめていた。



「体の調子はどうだ?夏美」
「うん、大丈夫よ」
ここは日向家のリビング…
プルルが夏美に対して様々な処置を行い、夏美は無事にギロロの子供を身ごもった。
そして検査や処置の開始から既に半年、妊娠週数19週、妊娠5か月になっていた。
元々拒否反応のあった敵性宇宙人同士という事が原因のようで
夏美はかなり強いつわりに悩まされたが最近はどうやらおさまったようである。

「なんだか不思議だな…」
少しずつ大きくなっていく夏美のおなかを見てギロロが感慨深げに呟いた。
「なにが?」
夏美が尋ねると
「ケロン人は元々胎生だがずいぶん前から卵(受精卵)から外で孵しているから…」
「こうしておなかの中で育てると言うのは実際に見た事がなかったのだ」

不思議そうな顔で自分のおなかを見ているギロロに
「この方が実感がわくでしょ?」
夏美が笑って尋ねるとギロロは大きく頷いて笑った。
「この前、赤ん坊の心音を初めて聞いた時には…その、正直驚いた…が」
「感動したわね」
「うむ…」
夏美と眼を見合せて笑うとギロロはソファから立ち上がり
「茶でも入れてやろう」
と言ってキッチンに向かって歩き出した。

その時リビングにモアの声が流れた。
「伍長さん、いらっしゃいましたら中央作戦室までお越し下さい」
「何事だ?」
「夏美、ちょっと行ってくる」
「うん」
夏美に一声かけるとギロロは地下基地に下りていった。



中央作戦室にやってきたギロロは状況説明をケロロから受けていた。
「敵の攻撃かも知れん、という事だな?」
「その通りであります、危険な任務になるかもしれないであります」
「もしよければ他の者を…」
ギロロを気遣って他の者に任務を与えようとしたケロロをギロロが止めた。
「タママには危険すぎる、ドロロよりは俺の方が適任だ…俺が行く」
「ギロロ伍長、夏美殿の事があるのにすまないであります」
「なに、赤ん坊が生まれるのはまだ先の事だ」
「様子を見てきたらすぐに帰ってくる、あっという間だ」
「宜しく頼むであります」
ケロロはギロロに向かって最敬礼をした。



リビングに帰ってきたギロロは夏美に冥王星行きの任務の事を話した。
「随分遠いのね…」
明らかに夏美の顔には不安の表情が見られる。
「すぐ帰ってくる、心配するな」
「どの位?」
「何も無ければ2〜3日だ」
「何も無ければって…」
夏美の手がギロロの手を握りしめる、その握る力に夏美のさらなる不安が感じられる。

「これが俺の仕事だ、軍人だからな…」
「…そうね、それに…」
「あんた『戦場の赤い悪魔』だもんね、心配するだけ無駄だよね」
夏美はそう言って笑って見せたがその笑いはどことなくぎごちないものであった。



ここは宇宙船のカタパルト。
ギロロが今回乗船する宇宙船はクルル自慢の最新型だ。
「いいか先輩、こいつの逃げ足は最速だ」
「何かあったらフルパワーで逃げな…」
「もちろん武器も十分装備してあるが、相手の事が分からねえ以上深入りは禁物だ」
「いざという時は脱出装置もばっちりだぜぇ」
クルルの念入りな説明が続いた。

「随分お前にしては丁寧な造りだな、それに説明もな…」
驚いたギロロがクルルに尋ねるとクルルは後ろを指差した。
「あんたに何かあると俺の命が危なくてね…」
指差した方をギロロが見ると其処には怖い顔をした夏美が立っていた。
納得したギロロは笑うと夏美の所に歩いていった。
「ギロロ…」
「夏美、行ってくるぞ」
「うん、気をつけてね…」
「了解だ」
ギロロは振り返り宇宙船に向かって歩き出した。
「あっ、ギロロ…」
夏美の声にギロロが振り返ると
「ご、ごめんなさい…何でも無いわ」
夏美は首を振ると手を振って笑いながらギロロを見送った。


やがてギロロを乗せた宇宙船はカタパルトから空高く舞い上がっていった。
「夏美殿、大丈夫でありますよ」
ケロロが夏美の声をかけるが夏美の返事はない。
「夏美さん」
ケロロの後ろからプルルの声が聞こえる。
その声に夏美が振り返ると
「ママがそんな顔していたら、おなかの子に良くないわよ」
「ギロロ君すぐ帰ってくるんだからのんびり待てばいいのよ…」
「お取り寄せで新しいケーキを買ったのよ、一緒に食べましょ」
ニッコリ笑って夏美の手を引くプルルに
「プルルさんに付き合うと太りすぎちゃう」
笑って夏美はカタパルトを後にした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ