宇宙色の恋(新婚編)

□小指の約束
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ここは日向家の屋根の上。
屋根の上では珍しくケロロとギロロが空を仰ぎながら雑談をしていた。
そんな中、急にギロロがモアの話を持ち出した。
「なあケロロ、お前どうするつもりなんだ?」
「どうするって?何をでありますか?」
首を傾げるケロロにギロロはモアの気持ちについてケロロの考えを問い質した。
「モアの事だ…何時までも幼子って訳じゃないんだぞ」
「・・・・・・・・」
「まさかこんな辺境の惑星で再会するとは思わなかったのであります…」
ギロロの言葉にケロロは暫く無言でいたが、やがて小さな溜息を吐いた。

そんなケロロにギロロは昔ケロロがモアにした約束の事を話し始めた。
「あの娘はまだお前との約束を覚えているに違いない…それがその場しのぎに言った発言だったとしても…」
「ギロロッ!!」
ギロロの言葉に急にケロロが声を荒げたが、自分の声に驚くとバツが悪そうに笑顔を見せた。
「…怒鳴ってすまなかったであります…でも分かって欲しいであります、我輩決してその場しのぎでは約束していないであります」
「すまんケロロ、失言だった」
ギロロもまた自分の発言が過ぎたものであったと反省し、ケロロに詫びた。

「あれからもうずいぶん経つんだな」
「…で、ありますな」
ふたりは青空を見上げながら当時の事を思い出していた、ケロロがモアと知り合い…そして別れた時の事を…
「あの時のお前は、その、なんだ…いかしてたぞ」
「我輩はいつだっていかした奴なんでありますよ」
「よく言うぜ」
「ゲロゲロゲロ」
ふたりは子供の頃のように無邪気な表情を見せながら笑っていた。



その頃日向家キッチンでは夏美とモアがケーキを作っていた。
「モアちゃん、ミルク取ってくれる?」
「はい」
最近夏美とモアは時々こうして仲良く食事やお菓子を作っている。
夏美とギロロ、人間体とケロン体の夫婦はケロロと一緒にいたいと言うモアにとって何よりのお手本なのである。
「私も早く夏美さんと伍長さんみたいにおじさまとラブラブな家庭を持ちたいです、って言うか家庭円満?」
嬉しそうにミルクの封を開けるモアに夏美はモアがケロロを好きな理由をどうしても聞きたくなった。
「ねえモアちゃん?」
「何でしょう?」
「モアちゃんはボケガエルのどこが好きな訳?」
夏美の質問にモアは満面の笑みを浮かべた。
「勿論全部ですよ、って言うか真実一路?」
「おじさまは昔からとっても格好良くて、優しくて…何時でもモアの事を想ってくれていて…それで…それで…」
ケロロをほめたたえる言葉がモアの口から後から後から終わる事無く出ていたが
急に身体が固まると無言のままミルクをボールの中から溢れさせている。
「・・・・・・・・」
「ちょっとモアちゃんミルク!ミルク!」
「…きゃっ、どうしましょう」
夏美の声でモアは我に帰ると慌ててミルクを持ち上げた。
「大丈夫よそれ位、それよりモアちゃん疲れているんじゃないの?」
「いえ大丈夫です、ちょっとぼんやりしてしまいました…夏美さんごめんなさい」
「気にしないで…じゃ続きを作りましょ」
「はい」
この時は夏美はもとより当人であるモア自身もまだ身体の異変に気付かないでいた…



そんなある日
リビングでお茶を飲みながらくつろぐギロロと夏美の前に涙で顔をくしゃくしゃにしたケロロが飛び込んできた。
「夏美殿―――!」
「何だ?騒がしいぞケロロ」
「どうしたの?ボケガエル」
「モア殿が…モア殿が…」
どうやらモアに何かあったらしい、夏美はケロロの話を詳しく聞いてみる事にした。
「モアちゃんがどうかしたの?」
「モア殿が…ひっく…」
涙でまともに話が出来なくなっているケロロにギロロが声を荒げた。
「女々しいぞケロロ、泣いてばかりでは分からん」
ギロロが諭してもケロロは泣いてばかりだ、夏美はギロロにまずモアの処に行って様子を見ようと提案した。
「とにかくボケガエルの部屋に行ってみましょ、ギロロ」
「そうだな」
ギロロと夏美はケロロを連れて地下のケロロの部屋へと向かった。



ケロロの部屋の戸を開くとソファベッドに寝かされたモアの姿を見つけた。
「モアちゃん!」
「…嫌です…大切…おじさま…助けて…」
夏美の声はモアには届いておらず、モアはずっとうわごとを言い続けている。
「なにが起きたと言うのだ」
「それが…それが…」
「え〜い!鬱陶しい奴だ!泣いてばかりでは解決するものも解決しないぞケロロ!」
うろたえてハッキリしないケロロをギロロが叱咤した。
ケロロは小さな声でモアが倒れた時の事を話し始めた。
「ヒック…モア殿は先程まで我輩のガンプラ作りを手伝ってくれていたのであります」
「『コーヒーを入れてきますね』って立ち上がったとたん、急に倒れて…」
「そう言えばこのあいだからちょっと変だったかも…」
ケロロの話に夏美は最近のモアが時々ぼ〜っとしている事が多くなっている事を思い出した。
「本当か?夏美」
「うん」
「モア殿が…モア殿が…」
「ボケガエル…」
ソファベッドの上でうわごとを言いながら倒れているモアの事を涙を流して心配しているケロロの姿を見た夏美は
モアがケロロに大切にされているという事を感じ、キッチンで聞いたモアのケロロに対するイメージも
まんざらモアの思い込みでも無いのだと感じた。



そんなケロロ達の許へクルルから通信が入った。
クルルは既にモアの倒れた原因を突き止めたらしい、クルルはケロロにその事を告げた。
「そんなに泣くなよ隊長、原因が分かったぜぇ」
「本当でありますか?クルル曹長」
「ああ、うわごとの中でモアの奴が『消さないで…』って言ってやがるからもしやと思ってな…」
「モアの記憶を覗いてみたら居やがったぜぇ、人の記憶を食いつぶす細菌『バクテリダリー』がよぅ」

「バクテリダリー?」
首を傾げる夏美にクルルはバクテリダリーについて説明をした。
「バクテリダリーってのはよう、人の頭の中に入ってそいつの記憶を全て食っちまうのさ」
「そう言えばこのあいだから少し物忘れが酷くなった様な気がするって言ってたわ」
夏美はクルルの言葉に最近モアと一緒にた時の事を持いだした。
「少しずつ食われていて、なんか大事な記憶を狙われ始めたんじゃねえかな、いずれにしてもこのまんまじゃまずいぜぇ」
「何か方法は無いのか?」
「あるにはあるぜぇ『ソウルダイバー』さ」
クルルがボタンを押すとケロロの部屋にソウルダイバーと呼ばれる機械が現れた。
「こいつを使ってモアの記憶に直接入り…バクテリダリーの奴を倒せば大丈夫さ」
「ただ急がねえと取り返しがつかなくなるぜ」
「取り返しがつかなくなるって?」
「少しくらい記憶が消された位ならこの基地に関係者の記憶がバックアップしてあるから元に戻せるが…」
「それでもあんまり古くて重要な記憶や基本的な人格まで食われちまうとどうする事も出来ねえのさ」
「大変じゃないボケガエル、急がなきゃ」
「ケロロ、俺も付き合ってやる…さあ行くぞ」
「あいや待たれよ」
「ドロロ!」
掛け声と共に何処からともなくドロロが現れると、ドロロもケロロに同行する事を申し出た。
「拙者も行くでござる、モア殿の昔の記憶でござろう?また三人で一緒に昔のモア殿に逢いに行こうよケロロ君」
「…ゼロロ」
「待って、あたしも行く」
「夏美、遊びに行くんじゃないんだぞ」
自分も同行すると言い出した夏美にギロロが一応注意をしたが夏美の気持ちが簡単に変わるものではない。
夏美はギロロに手を合わせると自分も同行する事に対する同意を求めた。
以前の夏美ならば意見など聞かず勝手について行くであろうが夏美も今はギロロのお嫁さん…
ギロロに必ず同意を求めるようになっていた。
「分かってるわよ、でもあたしもモアちゃんの事が心配なの」
真剣な表情で同意を求める夏美にギロロも首を縦に振った。
「夏美殿…それに皆もありがとうであります」
「ソウルダイバーの準備できたぜ」
ケロロが皆に頭を下げているとクルルから準備が出来たと声がかかった。
「それではモア殿の記憶の中に出発であります」
「夏美、念の為にパワードスーツを装着しておけ」
「うん」
こうしてケロロ、ギロロと夏美、そしてドロロの4人はソウルダイバーによってモアの記憶の中へと入っていった…
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