宇宙色の恋(新婚編)

□手料理を召し上がれ
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「いくわよ!」

夏美はキッチンで包丁を持って構えている。
その姿は何とパワードスーツ姿にエプロンという大変変わった姿だ。

夏美の向う先には「宇宙イカ」「宇宙エビ」「宇宙かに」などの海産物が大変新鮮な状態…
つまり生きたまま飛び跳ねている。

夏美は今、『宇宙お好み焼FX』を料理する為に
これらの宇宙海産物に挑戦しようとしているのである。


事の始まりは夕飯の時、

ギロロと夏美が一緒になって変った事の一つに日向家の食卓にギロロがいる事があげられる。
それまでギロロはまず日向家の食卓で夏美達と食事をとる事など無かったのである。

ケロロに一言言われたこともあり
大学で遅くなる時以外、食事の支度はそのほとんどを夏美がおこなうようになっていた。

「夕飯の支度ができたわよ〜」
夏美がテーブルに出したのは大盛りのゴーヤチャンプル。

「夏美殿…またこれでありますか?」
「姉ちゃん、僕もう飽きたよ…」
「うるさいわね、まだゴ―ヤが沢山残っているのよ、それに健康にもいいしね」
「でも…」
ケロロと冬樹は不満顔である。

日向家の食卓はここ一週間ゴーヤの料理が毎日の様に出されていた。
たしかに一週間ほど前にご近所のおばさんから親戚の家で採れたとかでいただいた山ほどのゴ―ヤが
キッチンにたくさん残っている事も理由の一つだが…
もう一つ理由があったのである…それは

ギロロがいたくゴーヤを気に入った…という事である。
「ちょっと苦いが、これはいけるぞ夏美」
今まで一緒に食事をしていない為、夏美はギロロの味の好みを模索している。
だから一つでもそれが好みと解ると嬉しくて何回も作ってしまうのである。

「ギロロ…どう?」
心配そうな夏美の顔がギロロを覗きこむ。
「うむ…うまいぞ夏美」
「味付けに慣れてきたようだな…」
ギロロが頷くと夏美の顔が明るくなる。
「良かった、たくさん食べてね」

好きな人の好みの物を作ろうとするのは自然な事である…が
にこやかに食事をする二人はともかく毎日同じおかずではケロロと冬樹にはいい迷惑であった。
「もっと他の物が食べたいであります…」
「同感だよ…」
ケロロと冬樹は夏美に聞こえぬように小さな声で囁き合った。

しかしその囁きは夏美の耳に入っていた
「なに?なんか言いたい事があるならはっきり言いなさいよ」
不機嫌そうな夏美の顔がケロロに迫った。
「いや…そ、そろそろギロロ伍長も他の物が食べたいんじゃないかと…我輩思ったのであります」

確かに毎日同じものと思ったのであろう
夏美は少し考えるとギロロの方に振り向いて
「え、やっぱりそう思う?…ギロロ」
とギロロに尋ねた。
「ん…いや、俺は別に…」
ギロロはケロロと夏美の会話に加わらず黙々とゴーヤを食べている。

「リクエストがあったら言ってね」
「いや…特には…」
食べたい物が何か聞いた時に「特に」とか「何でも」といわれる事は
作る側にとって嬉しくない事なのであるが
この場合、夏美は特にギロロの返事を気に留める事も無かった。

「夏美殿」
ケロロが横から口を挟んできた。
「夏美殿は確かにお料理の腕はなかなかの物であります」
「が…しかし…」
「?」
ケロロの言葉に夏美の動きが止まった。
「それは地球の料理に限ってなのであります」
「あたりまえでしょ、あたしは地球人なのよ」

「夏美殿はギロロ伍長の奥様であります」
またこれか…と夏美は思ったが言い返せない自分がいる、事実だからである。
「それがどうしたのよ」
「ギロロ伍長はケロン人であります」
「たまにはケロン星で食べた料理だって食べたいと思っているでありましょう」

「・・・・・・・・」
ケロロの意見はある意味正論だ、夏美は黙ってしまった。
「あ〜、夏美殿がケロン星で食べた懐かしい料理を愛情いっぱいで作ってくれたら…」
「きっとギロロ君はもっともっと夏美殿の事を…」
夏美は無言で俯いている。
「それに夏美殿、やはり宇宙的なお料理を作れてこそ…」
「ケロン人…いや、宇宙人の奥様になったと言えるのであります」

「解ったわよ…で、何を作ればいいの?」
「あたし何も知らないから…」
夏美は俯きながら小声で答える。
「軍曹、あんまり姉ちゃんをいじめちゃ可哀想だよ」
冬樹がケロロに注意をするがケロロは話を続けた。
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