宇宙色の恋(新婚編)

□天使のキス 前編
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ここはケロン星…

医療ブロックの奥深くにその研究施設は存在している。
「お願いします!」
複数の白衣を着たケロン人の前に立つスミレ色をしたケロン人。

「それはかなり難問ですね、プルル看護長」
白衣を着たケロン人の代表と思われる男は
頭をかきながら苦笑いをした。

「もし…もし可能性があるのでしたら、是非!」
プルルは男たちに深々と頭を下げた。
「…わかりました、我々もこのプロジェクトには我々の誇りと意地をかけています」
「ご希望にそえるよう努力します」
男はプルルに笑顔を見せた。

「ありがとうございます」
改めて深く頭を下げるプルルに白衣の男は
「プルルさん、確かに我々科学者は今回の事例に対して…」
「大いに興味がありますが…」

「プロジェクトリーダーになったとはいえ…」
「看護長のあなたがそこまで必死になるのは…」
「よほどあの二人…いや、夏美という地球人がお好きなのですね」
そう言って笑うと手を振って研究室の中に消えていった。

「…はい、私は…」
「私は彼女の…天使になりたいんです」
研究室のドアが閉まった後
一人になったプルルはドアの中の研究員達に向って
小さな声で呟いた。

・・・・・・・・

ここは地球…
地球は今日も静かな一日を迎えていた…
…そう、ここ日向家を除いては。

「もう!信じられない!」
「それはこちらのセリフだ!」
リビングでは朝からギロロと夏美が口論をしている。
二階の部屋からずっとこの状態で
それはリビングに来てからも続いているのだ。

「あ、あの…姉ちゃん?」
「伍長?」
間に入った冬樹が困っている。
夏美は冬樹を睨むと
「冬樹、あんた今日は朝から講義あるんでしょ?」
「早く大学に行きなさい!」

間に入った冬樹はとばっちりを受けている。
「冬樹にあたる必要はなかろう」
ギロロの一言に夏美はさらにヒートアップしていった。
「もういい!ギロロの分からず屋!知らない!」
「あたし一人で公園に散歩に行ってくる!」
夏美はプイっと横を向くと玄関から出て行ってしまった。

「分からず屋はどっちだ…」
ギロロは小さく呟きながら夏美を見送った。


ギロロと夏美が結婚してから早いものでもう2年が経とうとしている。
2年経っても二人の関係が変わるものではなく
相変わらず初々しさが残る二人であったが
仲が良いほどなんとやらで
時々はこうして衝突することもあるのだ。
もっとも最近の衝突理由は
おおむね決まっているのではあるが…

「あ、あの…」
「ギロロ伍長?」
ソファの蔭に隠れていたケロロが顔を出した。
「何だ!」
機嫌悪そうに答えるギロロに気を使いながらケロロが尋ねる。
「今日は一体何が理由なのでありますか?」

「お前に話す必要はない…」
突っぱねるギロロの後ろから別の声が聞こえた。
「教えてほしいわね」

「秋…」
ギロロが振り返ると其処には
目を覚ましたばかりで少しばかり眠そうにしている
秋が立っていた。
「うるさくて眠れないわよ…」
「すまん、起こしてしまったか」

「まあね、でもそんな事より…」
「何があったかお義母さんに話して御覧なさい」

「おか、おか…」
聞きなれない言葉にギロロは慌てている
普段は秋もギロロもお義母さんという呼び方はしないからだ。
「いいからギロちゃん、ここに座って」

秋は心配しているというよりこの状況を楽しんでいる様子で
にこにこと笑いながらギロロを手招きしている。
いつもの事で深刻な内容ではないことを分かっているからなのであろう。

秋に言われるままギロロはソファに腰を下ろし
「まあ、水でも飲んで落ち着くであります」
気を利かせたケロロが運んできた水を口に入れ一息つくと
静かに話し始めた。
「実はな…」
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