宇宙色の恋(新婚編)

□永遠の…後編
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「ガントリーロック解除よし!オールシステムグリーンです、おじさま」
「了解であります、モア殿」
「ケロン一世発進!」
ケロロの号令と共にケロン一世はその巨体を海底深く隠されたドックから浮上させると一気に空高く舞い上がった。
艦橋には通常操船担当をする筈のギロロもドロロも、そしてタママもいない
今回はケロロ自らがその操縦をおこなっているのだ。
「へ〜、ボケガエルも操縦できるんだ」
「当たり前であります、全く夏美殿は我輩を何だと思ってるでありますか…」
まともに操縦するケロロを見て夏美が感心するとケロロは馬鹿にされたと思ったらしく頬を膨らませた。
「ゴメン、だってあんた普段命令するだけだから…」
「普段、隊長は指揮をするのが仕事であります」
「ハイハイごめんなさい『ケロロ隊長』」
「…まったくもう」
まるで掛け合い漫才のような二人の会話にこれから戦場に向かう事も忘れ、艦橋内は和やかな雰囲気に包まれていた。

「前方にケロン二世およびケロン三世を確認しました」
「夏美殿、春日殿」
モアの言葉を聞いたケロロは夏美と春日にこれからの予定を告げた。
「これからこのケロン一世と冬樹殿とタママニ等の乗るケロン二世…」
「ドロロ兵長と小雪殿、そして623殿が乗るケロン三世は合体をおこなうのであります…」
「クルルの話では合体完了まで多少時間がかかるとのことでありますゆえ…」
「それまでお二人はラウンジででもくつろいでいてほしいのでありますよ」
「合体終了後はフルスピードで飛び、ギロロとイクアロボット軍を迎え撃つ予定であります」

「うん分かったわボケガエル、それまでゆっくりさせてもらうわね…春日、いらっしゃい」
ケロロの言葉に夏美は頷くと春日を連れて艦橋から出て行った。



ここはケロン一世のラウンジ
たとえ宇宙戦艦であろうとくつろぎの空間を作る事を忘れたりしない、ケロロと…そして何よりクルルのこだわりらしい。
艦橋を離れた夏美と春日はラウンジに来ていた。
「…春日、本当に良いの?」
「うん、大丈夫よママ」
パワードスーツに身を包んだ我が娘を心配そうに見つめながら夏美が尋ねると春日は大きく頷いた。
その瞳に確かな決意を感じた夏美は小さく息を吐くと優しく娘の肩を抱きしめた。

「このパワードスーツはね、あくまで春日自身の身を守る為に急きょママがクルルおじさんに頼んだものなの…」
「本当は春日を…あなたを戦いの場になんか立たせたくない…でも」
夏美は春日の肩から手を離すとうっすらと目に浮かべていた涙をぬぐい微笑んだ。
「…でもね、ナルル君を助けようとする春日の素直な気持ち…本当の気持ちをママは大切にしたいと思うの…」
「ママもママから…『秋ちゃん』からずっとそう言われてきたから…」

「ママ!」
夏美が笑顔で頷くと春日はその胸に飛び込んだ。
「でも無茶しちゃダメよ」
「うん!あたし絶対ナルル君を助けてくるわ」
ふたりは目と目を合わせると互いに大きく頷いた。
やがてふたりは横に並ぶとラウンジの窓から星空を眺めた。



「…ねえママ?」
「なあに?」
しばらく無言で星空を眺めていた二人だったが急に春日が夏美に声をかけた。
「ママは地球人なんでしょ?」
「そうよ、今更変な子ねえ」
春日の問いに夏美は首を傾げた。

「地球人の寿命って長くても100歳くらいなんでしょ?」
「そうね…平均で最近は80歳くらいかしら」

「ママの寿命ってパパと結婚する前から伸びちゃっていたのよね?ビデオで見たわ」
「そうよ、ケロロおじさんのせいで中途半端に延びちゃったの」
夏美の寿命はケロロのへっぽこ作戦などで使用したクルルの発明品などの影響を受ける事で伸びてしまったのである
もっともそれだけでは2〜300年延びたにすぎないのだが
この間ケロン星で更に寿命を延ばす処置をおこなう事でギロロ達ケロン人並みの寿命を手に入れたのである。
「それでこの間、ケロン星へ行ってパパ達ケロン人と同じくらいに寿命を延ばす処置をしたのね…」
「そうよ」
春日の呟くような声に夏美は笑顔で頷いて見せた。

「不安とか無かったの?地球人の寿命からずっとかけ離れたものになる訳じゃない…」
「プルルおばさんに言えば元の寿命に戻してもらえたんでしょ?」
春日の口調が沈んだものに変わっていく、夏美はそんな春日の頭を撫でるとウィンクをして微笑んだ。
「だってほら…今は春日もギルルもいるし…」
「パパを一人きりにするわけにはいかないでしょ?なにより結婚式でパパと永遠の愛を誓ったしね」
「春日だってビデオで見たでしょ?パパとママの結婚式」


夏美の言葉を聞いていた春日が小さな声で呟いた。
「永遠の愛なんて…本当にそんなものあるのかなあ…」
「春日?」
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