宇宙色の恋(新婚編)

□永遠の…中編
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「何時まで寝てるの、早く起きなさい!」
夏美の声が日向家に響き渡る。

ここは地球の日向家…

ケロン星でのロボット騒ぎから一カ月が過ぎようとしている。
その間に夏美に対する治療が終了した為、夏美達は地球に帰って来ていた。
ただ一人、ギロロを除いて…

ギロロの行方は依然不明のままだ、ケロン軍が総力を上げて探索したが見つからず
一カ月たった今では捜索規模も縮小されつつある。


「ママ、おはよう」
眠気眼で春日とギルルがダイニングに現れた、パジャマ姿の二人に夏美はおかんむりである。
「二人ともいい加減にしなさいよ、来週からはまた学校でしょ…」
「それに明日から下の基地に新兵訓練を受ける子達がやって来るの」
「二人とも生活のリズムを普段通りに戻さなきゃ…」
「パパが帰ってきたらうんと叱ってもらうんだから!」
「ごめんなさいママ」
夏美に叱られた春日とギルルは小さくなって頭を下げた。

ギロロがいなくなってから夏美の様子が変わったのかと言うと見た目にはそれほど変わらない。
今まで通りの生活をし、明るく家事をこなしている。
心配した周りの者が声をかけると
「何時だってギロロは自分勝手であたしの前からいなくなったりするけど必ず帰ってくるからあたしは心配していない」
の一点張りである。
ただ夏美を昔から知る者にとってはそれが夏美のやせ我慢である事など百も承知だ
今は夏美の気持ちを静かに見守ろうとそれ以上夏美に対し余計な口出しをする事は無かった。



朝食を済ませた春日とギルルは自分達の部屋に戻るとパジャマを脱ぎ、服を着替えた。
最もギルルはケロン体である、周りの影響からかTシャツの様なものをパジャマにしているが普段は服など着ない
パジャマを脱げばそのままである。
春日は人間体である為、そういう訳にはいかず地球人と全く同じである。
パジャマを脱ぐと普段着に着替え、髪の毛を整えた。
現在春日とギルルはまだ同じ部屋を使用している、徐々に大きくなる二人に対し
ギロロと夏美はそれぞれの部屋を与えようともうすぐ庭に部屋を増築する予定である。


「ねえ、姉ちゃん」
「何、ギルル」
ギルルがドレッサーで髪の毛を束ねている春日に話しかけてきた。
「パパ…何時帰るのかなあ?」
「・・・・・・・・」
ギルルの言葉に春日の肩が震えた。

「…あたし」
「あたしパパなんか大っ嫌い!」
「姉ちゃん…」
感情を昂らせ手に持っていたブラシを床に激しく叩きつける姉の姿にギルルは言葉を失った。
「…ママはああ言ってるけど」
「もう一カ月なのよ、パパがいなくなってから…」

「この前ね、見ちゃったのあたし…」
「夜遅くママが一人で庭のパパのテントの前で指輪を見つめながら涙を流しているのを…」

「だいたいママが治療で寝ている間にいつの間にかいなくなってそれっきりなんて…」
「自分勝手にもほどがあるでしょ!」
「それが軍人だって言うんなら、あたし軍人なんか大っ嫌いよ!!」


大声を出す春日をギルルはしばらく静かに見つめていたが目が合うと優しく微笑んだ。
「僕はきっとパパは帰ってくると思うな、だって僕達のパパだし…」
「パパはママの事大好きだもの…それに、僕もパパの事大好きだから…姉ちゃんだって…」
声を荒げ興奮していた春日はギルルの言葉に我に帰ると振り返りギルルを抱きしめた。
「…う、うん…そうだよね…ごめんねギルル…あたし一人で興奮しちゃって」
「みんなで待とうね…パパの事」
「うん!」

「姉ちゃん涙ふきなよ」
ギルルは持っていたハンカチを春日に渡した。
「ありがとうギルル…ってあんた!」
ギルルの手渡したハンカチは薄汚れ、まるまっている…
「このハンカチ何時から持ってるのよ!汚いわねえ…お洗濯するからよこしなさい」
「ごめんよう…藪蛇だあ!」
ハンカチを握り締めたまま逃げるギルルを追う春日は何時ものお姉ちゃんに戻っていた。
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