宇宙色の恋(新婚編)

□薔薇と口紅(ルージュ)
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事の始まり…
それは穏やかな春の日曜日のことであった。
ギロロと夏美が結婚してから早いもので一年が経とうとしている。
その間、様々な出来事や事件があり、その度に二人の絆は深まっていった…そう思っていた。
それは本人達だけでは無く、周りの者達も同じ気持ちだった…


「今日はお天気もいいからよく乾きそうね」
暖かな陽気に上機嫌の夏美は庭で鼻歌を歌いながら洗濯物を干していた。
「こんな日は何かいい事あるかも…」
真っ白に洗いあがった洗濯物を広げながら夢気分に浸っていた夏美を
リビングから聞こえてきた音が現実へと呼びもどしていった。

「ゲロゲロゲロゲロ…」
「クルクルクルクル…」
「ドロドロドロドロ…」
ケロロ達がリビングで共鳴をしている声が聞こえてくる。
「あいつら〜」
洗濯物を干し終わった夏美はリビングに怒鳴り込んでいった。


「五月蠅いわねえ!なんでリビングなんかで共鳴してるのよ?」
「やるんならボケガエルの部屋か地下基地でやりなさいよ!」
リビングに飛び込んできた夏美はその場に違和感を覚えた。
「あれ、ギロロは?」
ギロロの姿がそこには見えなかったのだ。
「パトロールにでも行ってるの?」

夏美の言葉にケロロは首を傾げた。
「今日は私用で休みを取っているのであります、てか夏美殿知らなかったでありますか?」
ケロロが不思議がると夏美も首を傾げた。
「変ねえ、何も言っていなかったわよ…」

「気をつけた方がいいぜぇ」
クルルの嫌みたっぷりな言葉に夏美はイライラしながら答えた。
「何に気をつけろって言うのよ…」
「そりゃおっさんも男だからよ…」
クルルの言葉が終わる前に夏美はクルルを蹴とばしていた。

「大体こんな処で共鳴なんて迷惑なのよ」
話題がいつの間にか共鳴の話に戻っていた。
「そうはいっても共鳴は我々ケロン人にとっては神聖なものなのであります」
「共に共鳴する事で心通わせ…」
「共に共鳴する事で連帯感が生まれ…」
「そして共鳴する事で気持ちを確かめ合う…」

「共鳴無くして我々ケロン人の意思疎通はありえないのであります…」
ケロロは夏美にそこまで話すと夏美にも共鳴を勧めた。
「ささ、夏美殿もご一緒に」

ケロロが共鳴を促すが夏美は顔を赤くして拒否した。
「嫌よ、恥ずかしいじゃないの…」
「大体あたしは地球人よ、ケロン人じゃないわ」

恥ずかしがって拒否する夏美にケロロは真剣な面持ちで尋ねた。
「もしかして夏美殿…ギロロとも共鳴しないでありますか?」
ケロロの真剣な表情に驚きながらも夏美はギロロと一回も共鳴をした事がないと答えた。

「…それはギロロ伍長もお気の毒な事であります」
溜息をつき真剣な表情で肩を落とすケロロの姿を見て夏美は共鳴をする事がケロン人にとって極めて重要な事である事を察した。
だが恥ずかしいものは恥ずかしい…
「だってギロロはしなくてもいいって言ってるんだもん…」
「『お前の好きにすればいい』って言ってくれてるんだから…」

夏美の言葉に珍しくケロロが声を荒げた。
「夏美殿はギロロの奥様であります!」
「当たり前じゃない」

夏美の返事にケロロは真剣に怒った。
「ケロン人にとって共鳴は神聖なものであるといった筈であります…」
「共鳴はお互いの心を通わせ、気持ちを確かめ合うもの…」
「共鳴もせずに『ケロン人の奥様』なんてよく言えたものであります」
「…ギロロがかわいそうであります…」
「そんな事だから今日ギロロが出かけている事も判らなかったのでありますよ」

「そんな事言ったって…」
真剣に怒るケロロの姿に夏美の声は小さくなっていった…
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