MOON RABBIT U
□白い暁
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少し震える手で、扉を開けた
彼はいつものようにソファを座って、いつものように紅茶を楽しんでいた
変わらない風景は私の気持ちをいつものように日常へと戻してくれて、体がスーっと軽くなっていくようだ
「おはよう、ナキ。」
「…おはよ…。」
いつもの笑顔
いつものあいさつ
たったそれだけのことなのに、心が満たされていくような感覚…
「紅茶があるんだ。まだ温かいよ。」
テーブルの上にある私専用のカップを指して、リーマスは微笑んだ
私はゆっくりと歩き、ソファのいつもの場所に座る
カップを手に取ると、甘い香りが鼻をくすぐった
「ありがと…。」
「お礼なんていいよ。ナキとちゃんと本音で話し合うことが出来れば、それでいい。」
カチャンと音を立て、リーマスはカップを置いた
ちょうど、私がカップに口をつけたときだった
「さっき、キミが眠っていた時に言ったんだけどね。私は、ナキの本心が聞きたいんだ。私のことをどう想っているのかも含めてね。」
初めて、リーマスの声を、言葉を聞きたくないと思った
彼の声には、何となく暗い負の感情が込められているように感じた
それはきっと、何があっても私に答えを求めるという証拠
「…そんなに、聞きたいの…?」
「そんなに、聞きたいんだよ。」
いつもの、リーマスの冗談も何か違う
「(…やっぱり…もう、いつもの日常には戻れないんだ…。)」
涙をこらえて、カップを割れない程度まで握り締めた