神隠しの果てに
□第1話
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どこかぼんやりとした、周囲に何もないような情景が目の前に広がり、同じくぼんやりとした思考で考えてもここがどこなのかはさっぱり分からない。
そんな状況に彼は立たされていた。
―――……どこだ?
疑問に思った彼がふと手元を見ると手はやけに小さく、そして泥だらけだった。
目の前には鉄棒が、周りを見て見ればジャングルジムなど
―――そうか、ここは子供の頃遊んでた公園……
「リョーマ」
彼が『何故自分はこんなところにいるのか』そう考えようとした矢先に背後から聞こえた声に振り向いた。
振り向いた先にいたのは高校生くらいの女性。
「姉ちゃん?どうしたの?」
―――姉さん……?
その女性に向けて『リョーマ』は彼の意思とは関係なく声を発した。彼女に向けて『姉ちゃん』と。
彼の困惑を余所に『姉ちゃん』は『リョーマ』に近づき頭を撫でた。
「ちょっとおでかけしてくるね」
「僕も行く!」
『姉ちゃん』の言葉に『リョーマ』は考える間もなく一緒に着いていきたいと主張した。
その様は子供らしく……彼の自意識からは遠くかけ離れていた。
「ちょっとおつかい行ってくるだけだよ?」
「女の一人歩きは危ないってお父さん言ってた!」
『リョーマ』の申し出に『姉ちゃん』は難色を示すが『リョーマ』は父から言われた言葉を盾に自分の意見を通そうとしていた。
―――この会話は八年前のあの日の……
その熱意とは裏腹に彼の意識は思考に沈む……それはこの会話の内容に思い至る所があるから。
「ちょっとお使い行くだけだから……リョーマなら一人でお留守番できるよね?」
「……うん」
―――姉さんを止めるんだ!!
「あ、もうこんな時間! 行って来ます!」
「お姉ちゃん待って!」
―――そうだ、これで……
「どうしたの?リョーマ」
「行っちゃ駄目……」
―――これで姉さんは……
「リョーマ?」
『リョーマ?』