08/19の日記

14:17
3年後設定、吾代視点
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口を開けばワラジムシだの

ナメクジだの

貧相だの

ドラム缶だの…



散々あの化け物が、少女に向けて口にしていた愚称。

けど、その少女を呼ぶ声はいつだって、嘲り以外の何かを含んでいた気がする。







長い長い不在から帰って来た化け物。


「吾代」

「んだよ」


事件現場で、『探偵単独』の仕事に、あいつは一切の口出しをしない。

ただ俺のように、事件解決を、ひたすら待つ。


待っている間の俺は、あいつなら大丈夫だと思っていながらも、いつだって、一抹の不安を抱え、知らず眉間に皺がよる。

探偵が果敢にも、単独で犯人と向き合い話し合うようになってから、それは休むことなく。


特に今回みたいな、前情報で気性が荒い犯人だと分かっているときは。



けどこいつは

化け物は



ネウロは



「貴様はどちらがいいと思う?」

「あ?」

「キャメルクラッチか、スリーパーホールドか」

「…は?」

「一仕事終えたザ・ナメクジへの労い方だが」



…ニヤニヤと楽しそうに笑ってやがる…

(こいつに心配とか不安とか…抱いてほしいと思うだけ、無駄なんだろうな…)

事件現場の建物を眺めながら笑う助手。

(ちっとは丸くなってるかと思ったのによ)

「吾代」

「…今度はなんだよ…」

「車の準備をしておけ」


すぐあと、現場から笑い声が上がる。
少女の笑い声と、犯人の笑い声が。

ああ、無事すんだんだなと、胸を撫で下ろした。


「ふむ。やはり、スリーパーホールドがいいな」

独り言のように呟いた化け物は、先程まで浮かべていたニヤニヤ笑いを引っ込めて



ただただ、言葉とは裏腹に、柔らかい笑みを浮かべていた


それはとても人間じみていて、
その眼差しは、

愛しさを含んで



(…化けもんでも、あんな笑い方すんだなー)なんて、頭の隅で思う。




──素直に誉めて、抱きしめてやりゃあいいのに。



それは、タバコの煙と共に吐き出して、霧散させた。





end

魔人の変化を間近で見た人2。
3年後、事務所組はこんな感じがいいなあ

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