ShortStory

□初詣:番外:元旦
1ページ/12ページ

鳥居の前で時計を気にしながら、押し寄せる人の波を観察する。ここは街で唯一の「神社」という建物で、こういう文化が根付いたのもごく最近の話だ。
数十年前に移転魔術の開祖「エルラー」の祝福を受けた賢者が、その強力な移転魔法の力で異界へ行き、その世界から持ち込んだ文化らしい。

こんなものを作り出すなんて、余程特殊な生き物が集まっている世界なんだろう。
これを一から作り、文化にするなんて思い付きもしない。


でも、今ではこれもなかなか面白いと思うけど。


普段は絶対にありえないほどの人だかり。ああ、この街にはこんなに人がいたんだなって、何だか感心する。
そして、オレは相変わらず待ち続ける。

オレの好きなヒトを。



「ドリー!」

鳥居に寄り掛かりながら、なお集まり続ける人ごみの中から、お目当てのアイツの呼び声を耳にした。
期待に胸をときめかせ、しかしそんな気持ちをあからさまに見せたらカッコ悪いとか、よくわからない意地みたいなものが湧き出てきて、感情を少し抑えてアイツの登場に臨むことにした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ