「君、どこの隊員かと思たらうちの隊やったんやね」

仕事中、いきなり声が聞こえ見上げると自隊の隊長、市丸ギンがいた。

「おっしゃっている意味が分かりません」

「何や、忘れてもたん?


僕を覗き見た日のこと。」

いきなり顔を近づけてきたかと思えば耳元でそう言われる

あぁ…そう言えばあの日のことは秘密なんだった。

て言うか…

「私、覗き見なんかしてません。
あれは勝手に隊長がっ!」

言い掛けると口に人差し指を置かれる。

大声で言うなってことか…。

「で、それがさっきの発言とどう関係するんですか?」

「僕、君と話すんも顔を見たんもあれが初めてやってん」

その発言…ちょっと酷くない?
話すのはいいとして、部下の顔を見たことないって…。
これでも、もう2年くらいここで働いてるんだけど……

「おーコワ。
そない睨まんといて」

言われて自分が睨んでいたことに気づく。

「まぁ、それでちょっと気になって調べたら自分の隊で驚いたわ」

「そうですか。
それで、用はないんですね?」

「ん?そやね」

一瞬考えるような素振りをしてからの即答。

まったくこの人は…。
用もないのに私の所にくるなんて、
仕事をする気がほんとにないな。
もはや呆れるしかない…

「ならいつものようにサボるなり好きにしてください。
私は今日中にこの書類を終わらせないといけないんで。」

言い終えると私は書類に目を移す。

これ以上隊長に付き合ってられない!!









夕方。
やっと仕事を終え、こった体をほぐすため伸びをする。
すると、

「お疲れさん」

肩を揉まれる。

この声って…
まさかと思いながら振り返ると想像通りの人が後ろにいた。

「市丸隊長…。
まさかずっとここにいました?」

「うん。
君、話しかけても反応せんし…仕事に集中しすぎや。
おかげで僕、暇やったよ」

いやいやいやいや…。

色々ツッコミたいところはあるけど抑える。

「暇ならどこか行けば良かったじゃないですか」

なんでわざわざずっと私の隣に…。

「なんでやろ。
……君を見ときたかったんかも」

「なッ!!!」

ストレートな言葉につい顔が赤くなる。

「ん?なんや、そないな可愛い表情もできるんや」

「っ!もう放っておいてください!
仕事も終わりましたし、私はもう帰りますからっ!!」

赤い顔をこれ以上見られないよう立ち上がり、書類を隊長に渡す。

そのまま扉に手をかけた時、

「お疲れさん、また明日」

後ろを少しみるとひらひらと手を振る隊長。

「お疲れ様です」

小さく言った後私はその場を後にした。


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