実話集
□最強の敵
1ページ/3ページ
昼食まであと10分。
そう思うと少しだけ緊張がやわらいだ。
今、私は最強ともいえる敵と死闘を繰り広げている。
戦うと言っても、殴り合い、言い合いをしているというわけではなく、ただ普通に
いすに座り、授業を受けているだけである。
そして、私は、毎日この時間、
誰も知らない静かな戦いをヤツと繰り広げていた。
ヤツとは、みなさんも一度は戦ったことがあるであろう有名なヤツである。
ヤツの一般的な呼ばれ方は
腹の虫または、腹の音である。
なんだよ、腹の音なんか気にしてんのかよっと思った皆さん…ヤツをなめてかかっちゃいけません。
なぜなら、
今は、午前中最後の授業中。
授業は普段よりも静かにスムーズに行われていた。
ここで腹を鳴らしてみようものなら…考えるだけで、恥ずかしい。
ぐう〜と、なって隣の男子に聞こえようものなら、何を言われるかわからないし、
鳴るまでは、どのくらいの大きさで、どんな音で、どれくらいの長さでくるかもわからない。
まさしく、最強である。
ヤツについてみなさんに説明が終わった瞬間、おなかをなんともいえない不思議な感触が襲ってきた!
(来たっ!)
反射的に手が動き腹を強く押さえる。
しばらく、そうして耐えると、ヤツの攻撃を回避できる可能性が高くなる。
(とりあえず、危機回避つまり防衛に成功した)