オリジナル

□失恋2つ
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好きなんだ。

その言葉さえも言えずに、俺はおまえの肩を叩いた。

決して、俺の気持ちが伝わらないように、
決して、俺の思いを気づかれないように、

「あんま、気い落とすなよ。女ならいくらでもいるさ、なっ。」

俺はおまえにいつものように笑いかける。

友達として、

おまえに笑う。
おまえを励ます。

失恋したおまえは、いつもより元気がなくて、寂しそうで、悲しそうで…

そんな顔してほしくなかった。


「おまえには分からないんだよ、失恋したオレの気持ちなんか。」

おまえは怒ったように言った。

分かるよ。
少しくらいは…本当はもっと、すごく分かるよ。
失恋したやつの気持ちくらい、
分かるに決まってるだろ?

おまえに恋なんかした時点で、
男が男に恋した時点で、
俺は失恋決定なんだからさ、


おまえにはわかんないよなぁ。
こんな俺の気持ち。


おまえが好きな女に失恋して、俺は馬鹿なほどほっとしてるんだ。

でも、馬鹿なほど悔しいんだ。


なんで、おまえの良さが、そいつに伝わらなかったんだろうな。

おまえは、すっごくいいやつなのにさ、
俺の好きな人なのにさ、


おまえが失恋なんかしていいはずないよな。


失恋すんのは俺だけで十分さ、
そうだろ?

「…あぁ、オレ、彼女のこと本当に好きだったのになぁ、」

ポツリとおまえは呟いた。

わざとらしく明るい声で、少し笑っておまえは言った。

「無理すんな、」

俺はおまえに優しく言った。

俺にはこれくらいしかできることないけどさ、

せめてこれだけは言わせてくれよ。

「おまえは十分魅力的で、いいやつだからさ、絶対おまえのこと好きなやついるよ。絶対おまえのこと見ててくれる人いるよ」


おまえは、気休めでもうれしい言葉だ、なんて言ったけどさ…

気休めじゃねーんだよ。

好きなんだよ。
おまえをちゃんと見てるよ。

俺はおまえを見てるよ。

俺はおまえを好きだよ。


だから、元気だせよ…。

って、言えたらいいのになぁ…


無理か。

俺、男だもん。

んなこと告白されたら、
もう友達でもいられなくなるよなぁ…。

あぁ、好きだよ。
くそっ、好きなんだよ。

馬鹿やろー。

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