オリジナル
□卒業
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優しく微笑む貴方。
楽しく話す貴方の声。
友達に囲まれている貴方の姿。
全部、全部、頭に焼き付けよう。
今日で最後だから、
今日が貴方に会える最後の日だから。
「なんか、今日が卒業って感じしないよねぇ」
友達がそう言った。
私は曖昧に頷く。
「何かさ、今日が卒業とは思えなくってさ…」
遠くの方で、貴方の話す声が聞こえた。
『私も同じ気持ちだよ』
と、私は心の中で、貴方に答える。
私は、彼と話したことがない。
私は、彼と同じクラスになったこともない。
でも、私は彼が好きだった。
彼が好きになってしまった。
人気者の彼。
頭も良くて、カッコいい。
だから、好きになったというわけじゃないけど、私は彼が好きだった。
理由なんてわかんない。
だって気づいたら好きだったから。
でも、今日で終わり。
片思いも、見るだけの恋も。
だって、今日で彼と会うことはない。
私は彼と会う機会が無い。
だから、すべておしまい。
すべて、終わり。
さようならだ。