長編
□仮面舞踏会
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「お嬢様、とてもよくお似合いですよ」
お嬢様と呼ばれた少女、サラは、婆やの言葉に、にっこりと微笑むが、
「どこも、変な所はない?大丈夫?」
と、心配そうに自分のドレス姿を鏡で何度も確認する。
「大丈夫ですよ、お嬢様」
婆やは笑った。
今日、サラが幼い頃から夢見た、あの仮面舞踏会に参加することになったのだ。
サラの母が生涯、忘れることのできない大切な人と出逢った、仮面舞踏会。
サラ自身も、そこで、生涯忘れることが出来ない人と出逢うことをずっと夢見ていた。
母から何度も聞かされた、夢の舞踏会。
母だけでなく、婆やや、お姉さま、叔母さま、様々人々から、色々な話を聞かされた。
開かれるのは年に一度だけの特別な舞踏会。
でも、サラにとっては最初で最後の仮面舞踏会。
緊張していた。
でも、わくわくしていた。
「さぁ、お嬢様、お時間ですよ」
婆やの声にサラは頷いた。
そして、ゆっくりと歩き出す。
いつもより着飾った自分の姿にサラは微笑んだ。まるで、誰か知らない人を見ているようだ、とサラは思った。