☆ムスカの小説☆
□シータ×ムスカ(要塞にて)
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《ティディス要塞にて》
ムスカはシータを連れて部屋を出た。悪魔の骨と呼ばれたロボット兵を見せるためだ。
シータはその異様な姿のロボットを見て怯えていた。ムスカは構わず飛行石をかざしラピュタについて語りだす。そしてシータの真実の姿を告げた。
シータがラピュタの真の王女だという事を。
シータは初めて知った真実に愕然とした。しかしパズーの身を守る為、パズーをつき離し別れを告げたのだった。
部屋に戻ったシータは窓際にたたずんでいた。おそらくパズーの姿を確認したいのだろう。見えるのかどうかムスカにはわからなかったが金貨までやった小僧にもう用は無い。飛行石のペンダントをシータにかけてやりながら優しく話しかける。
「この石を働かせる呪文を教えてくれれば君も自由にしてあげられる…」
その時、シータは自分の中の何かが目覚めるのを感じた。それはどこか懐かしいような不思議な感覚だった。飢餓感、支配欲…それらの衝動は全て今までのシータには無縁のものだった。自分の真実の姿を知り、石を取り戻した事で王族としての自覚が呼び覚まされたのだ。
「待ちなさい」
立ち去ろうと扉に向かうムスカに話しかけた。その声は今までのか細い可憐なものとは違い、どこか威厳のある傲慢さを感じさせるものだった。ムスカは驚いて足を止めシータに振り返る。
(小僧の事で怒っているのか?)
ムスカはシータの顔を見てぎょっとした。つい先程まで泣き出しそうな顔をしていた少女から儚さや憂いをおびた表情が消えさっていた。それどころか凛とした瞳には冷酷さを感じさせるような光が宿っている。
(…さっきとはまるで別人だ…)
ムスカは内心動揺したがそんな事はみじんも見せずに柔らかく話した。
「どうしたのかね?」
シータは何も語らずにムスカの目を鋭く見つめていた。シータは全て思い出したのだ。
自分の血もラピュタの事も…石や呪文の事も。
「私は王女よ」
シータは冷たく言い放つ。
一瞬の沈黙の後ムスカが口を開いた。
「……そうだ。だから石の働かせ方も君ならわかるはずだ。ラピュタは強大な兵力を持つ帝国だ。他国にのっとられでもしたら世界が危ないのだよ。」
「ラピュタは恐怖の帝国なんかじゃないわ。世界を統べるべき支配力を持つ素晴らしい王国よ。」
「はっ…?」
シータの瞳は冷酷に怪しくらんらんと光っていた。
「……そうだ。ラピュタは素晴らしい城だ。やっと解ってくれたのかね?」
ムスカはシータの変わり様に驚きながらも彼女がラピュタの価値を理解しだした事を嬉しく思っていた。これでこの少女も少しは自分の力になるだろう、と。
「君が協力してくれれば必ずラピュタにたどり着けるはずだ!」
ムスカの声は熱をおびている。
「ええ。ラピュタは私の帰りを待っている事でしょう。……ただ協力するのは私ではなく貴方の方よ。」
「なん…だって…?」
ムスカは怪訝な顔をする。
「当たり前でしょう?私は王女よ。世界を支配する国の頂点に立つ者なの。…貴方も既に知ってた事じゃない。…そして貴方自身がラピュタの血をひく、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタだという事も。」
「!?」
今度はムスカが愕然とする番だった。
「な…何故…それを!?」
「王女だからよ。貴方は私に従わなくてはならないわ。貴方の血より私の血の方が強いのだから。」
それはシータの首からさげた飛行石の妖しい輝きがよく示していた。ムスカが王族の血を自覚していても飛行石は今まで何の反応も示さなかったのだから。