☆ムスカの小説☆
□シータ×ムスカ(要塞にて)
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「君は何を思い出したのだ?」
「全てよ。」
その一言だけでムスカさえも圧倒してしまう威厳があった。しかしムスカは少女の下につく気など微塵も無い。自分よりかなり歳も離れ田舎で細々と暮らし、ラピュタの事や王家の血も何も知らずに生きてきた少女になど…。
(私はどれだけの歳月をラピュタに費やした事か……)
それが血だけで負けるなど納得がいかないのも無理はない。
しかし…そこは特務機関の男。感情を抑えて柔らかく話しだす。
「…ではリュシータ王女、ラピュタへの帰還に協力してくださるのですね?」
<したて>にでて利用した方が得だと判断したのだ。
「それは私が決める事よ。私は貴方でなくても構わないのよ。…ただ貴方は自身の力だけではラピュタにたどり着くのは困難でしょうね。それに…私がラピュタを支配してしまえば貴方をたどり着けなくする事など容易な事なのよ。」
シータは無表情で淡々と話した。
(これはとんだ女王様だ…私でなくても構わないだと?私が全てを思い出させてやったのに。…あの小僧をまだ気に掛けているのか?)
「…パズー君を連れていきたければ連れていけばいい。それより空中に浮かぶ城に君達だけでたどり着けるかな?」
ムスカは早くもしたてに出た事を後悔していた。地下のロボット兵が起動可能な事等、知るよしも無いムスカは自分自身の状況の方がはるかに有利だとふんでいた。シータは捕らわれの身であり、この要塞に彼女の味方等1人もいないのだから。
「パズー?あんな人はどうでもいいわ。」
先程とは全くの別人格になってしまったシータにムスカは驚きと共に苛立ちを感じ始めていた。
「でも…そうね。おそらく貴方に連れていってもらうのが一番早いわ。」
「ならば何故!?」
「私が気にいらないのは貴方の態度よ。私に数々の無礼を浴びせておいてムシが良すぎるんじゃないかしら?」
ムスカは心の中で舌打ちした。シータが王女としての自覚を持っただけでこれ程までに別人になってしまうとは思ってもいなかった。むしろラピュタの力を理解させる事の方が困難に思えていたのに…。
(要するにご機嫌とりをしろという事か…。面倒な王女様だ。)
ムスカの頭には<拷問>の2文字がよぎり始めていた。
(城の封印さえ解かせればどうにかなるはずだ…しかし…)