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1.はじめましてこんばんは
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あああ……どうしよう。
おれ──内藤晴喜は今、窮地に立たされています。

おれの家は花屋をやっている。お得意様へ豪華な花を配達をしたあと、事件は起こった。

「あ、あの……」

真っ暗な路地裏。
おれの両側には強面のオニイサン。
目の前の彼はニヤーっと作り笑いで、わざとらしく優しい声で言った。

「金、貸して?」

これがカツアゲってやつですか…!

お得意様の店は繁華街にあって、深夜近くになるとこういうヤンキーさんがぽつりぽつりと出始める。

その出始めのヤンキーさんたちは、この場所に似つかわしくない格好をしたおれ(おもいっきり『フラワーショップ・ないとう』とプリントされたピンクのエプロンだ)を見るなり、路地裏に連れ込んだのだ。

「いや、ですっ!」
「はあ?お前に拒否権はねえんだよ。いいから金出せ!」
「もも、持ってないです」
「……あ?」

いや、持ってないのはほんとです!だってお得意様の集金は来週だし、単なる配達でわざわざ財布持ってきませんて……っ!

でも、オニイサンたちは納得いかないようで(そりゃそうだ)今までよりもグッと声を低くした。
「っひ!」っとおれは息をのみ、視線を下にする。
確かにお得意様には何度か配達に行ってるけど、こんな遅くに届けて?と言われたのは初めてだったんだって!だから今日は何かあるんじゃないかと思ってビクビクしていたけど、予想が当たるなんて……っ!神様のばかやろう!

「金、持ってねえならおれらのサンドバッグ決定だけど……?」
「うぐっ……」

どっちにしろ地獄!
ニタニタ笑ったオニイサンたちは、おれの顎を掴んで無理やり上を向かせた。
地味に痛いよこんちくしょうめ。

「ま、自分の不運を恨めよ平凡!」

顎を掴んでいた手と反対側の手が、ひゅっと後ろに下がる。

平凡で悪かったな。おれだって好きで平凡に生まれたわけじゃないよ。

ああ、殴られる。
金、盗られるよりマシなのかな。
痛いのはいやだけど。

明日、学校なのに。

まぶたを閉じる。
真っ暗なら何も見えずに済む。












が。おれの体に、オニイサンらの拳がぶつかってくることはなかった。

あ、れ……?

恐る恐る目を開けると、おれの鼻先数センチのところで、ゴツゴツした拳は静止していた。

──横から伸びてきた、第三者の手によって。

神様はおれを見捨てなかったらしい。




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