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2.一方通行なラブコール
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おれたちが通う高校──響ヶ丘高校はごくフツーの共学だ。先生たちが歴史だ伝統だと口をすっぱくしながら言っているせいで染み付いてしまった、おれたち(今の1年)の代で100周年!という記念すべき学年なんだという気持ち。ともかく歴史だけはある学校なのだ。

特に朝の登校風景はおもしろい。その100周年を記念して、おれたちの代から制服が変わったのだ。

今の3年と2年は男子がフツーの学ラン。女子はセーラー服。
1年は男子が紺ブレザーに灰色のワイシャツ、赤いネクタイ。女子はブレザーとワイシャツは男子と一緒で、赤と茶色のチェックのリボンかネクタイ。とまあ豪華になったもんだ。確かすごい有名なデザイナーに依頼したらしく、ちょっぴり値段がお高めだった。(母さんが言っていた)

で、その2つの制服が入り交じって登校しているのだから、入学して最初のころは笑いが止まらなかった。今は慣れたけどね。

おれは眠い目をこすりながら、校門までの銀杏並木を歩く。くあ、とあくびをしたら隣の清人に小突かれた。

「寝てねえのかよ」
「うー…あのあとぐるぐるしちゃって。怖かったじゃん!」
「いや、お前全然怖い!って顔してなかったからな?」
「うそっ」
「でも中身はすっげえ焦ってるって感じ?」

くそう。ニヤニヤしてうざい!けど何も言えない!
清人には隠してもわかっちゃうし。ま、幼なじみだしね。そうだよね。

「で、お前、あいつのこと知らねえの?」

それにこの質問。昨日の夜あのあと清人に殴られながら帰っている間、清人はこの質問ばかりしている。そしておれが答える度にふっかあああい溜め息を吐くのだ。

「知らん。何なの昨日からー。あの人有名人?」
「……はあ。お前まじ世間知らずっつか、疎いっつか」

しかし、清人はそれだけ言って足を早めた。すたすたを長い足を動かして、おれを置いていく。
待て清人!女子からのあっつい視線を背中に浴びながら堂々と歩いていくのにはちょっと尊敬するけど

「おれを置いてくなああああああっ!!」

そのとき、視線の海を掻き分けて清人を追いかけていたおれは、その光景を見ていた屋上からの視線には気づけなかった。

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