銀魂(長編)
□路 9話
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部屋に着くと、師匠は早速切り出した。
「単刀直入に聞くが、どうなんじゃ九兵衛よ」
「……」
「お優がこの事を知っていたのは驚いたが、本当に持ち上がっている話しじゃ。お優の気持ちは、さっきも聞いたな。残るはおぬしの気持ちだけじゃ」
「……申し訳ありません…」
九兵衛は伏目がちに答える。
「…お優では不服か?」
「いえ…お優ちゃんは明るくて、前向きで、とても魅力的です。僕もお優ちゃんといると元気をもらえました」
「では、何故?」
「……………」
「…九兵衛、もしや他に言い交わした女子でもおるのか?」
「……」
「答えろ、九兵衛」
「…事情がありまして、この手で幸せにする事は叶わないのですが、僕には一生を掛けて護りたい女性がいるのです」
意を決したように、顔を上げると真っ直ぐに師匠の顔を見て、九兵衛は答えた。
「…事情?―もしや、おぬしまさか…」
師匠の眼がギラリと光る。
「まさか人妻に手を出しているのではあるまいな?!そんな、そんな羨ましい事を―」
「とんでもありません!彼女は普通の女の子です!」
これ以上黙って聞いていると、何を口走るか分からない師匠の言葉を遮り、九兵衛は慌てて否定した。
「…む。ならば、どうしておぬしが幸せにしてやれないのだ?」
「…僕が弱かったからです」
「…それは、その左目に関係している事なのか?」
「………」
「答えたくなければ、それでもいい。だが、九兵衛よ。その女性の幸せを護り続けるだけで良いのか?おぬし自身の幸せはどうなる?」
「自分の幸せなどは考えておりません」
「そんな事はないぞ。人はそんなに強い生き物ではない。そんな不自然な形の愛情はいつか破綻する。その女性の事が大事なら、幸せになってもらいたいなら、おぬしも幸せにならなければならない。その女性と二人でな」
「…………」
「…まあ、いい。おぬしがそこまで言うのであれば、お優の入り込む余地はないと言う事だろうな…。お優にはわしから言っておく」
「…申し訳ありません」
「―と、言う事じゃな。…こんな所で良いかな?」
いきなり師匠は後ろの襖へと声を掛けた。
何事かと驚く九兵衛の目の前で襖が開く。
「…はい。ありがとうございました。―お久しぶりです、九兵衛さん」
9話・完 次話へ続く