銀魂(短編)1

□積雪
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「今日は随分寒いわね…」


店から出た途端に吹き付ける冷たい風に、君は肩をすくめる。


「確かに風が冷たいな」

僕も思わずコートの前を合わせ空を見上げると、一面にどんよりとした黒い雲が覆っている。

「雲行きも怪しいな。早目に帰ろうか」

「…そうね」

言いながらも、ちょっと未練がましく後ろを振り返る。



「買物はまた何時でも来れるけど、妙ちゃんが風邪を引いたら僕が困るよ」

「買い物じゃなくて…」

「ん?」

「今帰ったら、九ちゃんともお別れでしょう?せっかく久し振りに会えたのに…」

「妙ちゃん…」

可愛い台詞に思わず抱き締めたくなる衝動を懸命に堪える。こんな所で抱き締めたら、また妙ちゃんに叱られてしまう。



「じゃあ、これから妙ちゃん家に行っても良いかな?」

「九ちゃん、時間大丈夫なの?」

「うん。今日は少しゆっくり出来るんだ」

「本当?じゃあ決まり!そうしましょう」

嬉しそうにする君に、更に愛おしさが募る。



「…それにしても、本当に寒いわね」

寒そうに肩をすくめ、両手を口元に寄せ息を吹きかけて暖めている。



「―おいで…」

暖めてあげようと君に向かって手を差し出すと、余程寒いのか僕の手を取りそのまま腕にしがみついて来た。

思っていた以上の接触に思わず僕の心臓が高鳴る。


「九ちゃんは暖かいわね」

「妙ちゃんのおかげで僕も暖かいよ」

そう言いながらも君の腕を通して、僕の鼓動が分かってしまうんじゃないかと思う程ドキドキと心臓がうるさい。






その時、何かがふわりと僕の鼻の頭に触れる―。




「―あ…」

思わず二人同時に声を上げる。




「―雪…」

「道理で寒いはずだな…」

空を見上げると、ふわふわと白いものが無数に降り始めたところだった。



「私達、今雪の降り始めを目撃したのよ!最初のひとひらが九ちゃんの鼻の頭に落ちたもの!」

君は急に寒さも忘れたように目を輝かせる。



「嬉しそうだね、妙ちゃん」

「寒いのは苦手だけど、雪は大好きよ。幻想的で素敵だもの」

そう言って掌で雪を受け止め、解けていく様を見て喜んでいる。

僕は雪なんかよりも、そんな君の可愛らしい仕草の方に目を奪われる。



「積もるかしら?」

「どうだろうな。積もったら積もったで大変だよ。江戸は積雪には弱いから」

「…積もるといいわ」

「如何して?」

「たくさん積もったら、九ちゃん家に帰れなくなるでしょう?そうしたら今日はずっと一緒に居られるわ」

「……………」





「…きゃっ、」


僕は何も言わずに、いきなり君を抱き締めた―。


「きゅ、九ちゃん。ここ街中よ…」

「…妙ちゃんが悪い…」

「ど、如何して?」

「如何しても…」

さっきからずっとギリギリで自分を抑えてきたのに、そんな台詞を聞かされてまで我慢できる訳が無いんだ―。







―僕は雪の降りしきる中、きつくきつく君を抱き締める。

僕の腕の中で君が何かを言ったけれど、それにも答えずひたすらに君を腕の中に閉じ込めていた―。












今日は寒かったので、寒さにちなんだお話を。

甘えん坊のお妙さんです。無意識に九ちゃんの秘孔を突きまくり。きっとこの後の志村家では甘い時間が流れた事でしょう。

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