銀魂(短編)2

□本心
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「お妙さ〜ん、今日こそは僕と一緒に弁当を食べましょう!」

「私は九ちゃんと食べるから、結構よ」

「そんな事言わずに!たまにはいいでしょ〜」

「ううん、たまにだろうとなんだろうと、ゴリラとお昼を食べる趣味は無いの」

「そんな!ゴリラにはゴリラの良い所があってですね…」

「しつっこいんだよ!てめぇはぁ」


妙ちゃんのストレートが、近藤君の顔面に綺麗に決まった瞬間まで見ていた僕は一人で先に席を立った。

妙ちゃんはクラスの人気者だ。他にもきっと妙ちゃんを好きな人は沢山いるんじゃないかと思う。

そう思うと、いつでも僕の胸は少し痛くなる―。




昼休みの屋上は、すでにあちこちに女の子達がいたけれど、皆、自分達のおしゃべりに夢中で他人を気にしている様子は無い。

僕は自分のお弁当を足元に置き、下のグラウンドに目をやった。

早々に昼を済ませた男子達がサッカーをしたり、キャッチボールをしたりしている。

僕は下のグラウンドの中には入れない。屋上でおしゃべりをしている輪の中にも入れない。


僕はなんて中途半端な存在なんだろう―。

こんな中途半端な人間が、妙ちゃんを独占していていいのだろうか…。

妙ちゃんはもっといい人と知り合えるんじゃないか…。

最近はすぐにこんな事ばかりを考えてしまう自分がいる。




「九ちゃん!」

呼ばれて振り返ると、息を切らしながら駆け寄ってくる妙ちゃんの姿が目に入った。


「どうして、先に行っちゃうの?」

「ごめん」

そう言って謝ると、少し心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。


「元気ないわね…。もしかしたら、さっきのゴリラの事気にしてるの?」

「そんなんじゃ、ないんだけど…」

「じゃあ、なぁに?私には言えない事?」


妙ちゃんはさっさとお弁当を食べる場所を決め、そこに座り込み自分のお弁当を広げる。

僕も妙ちゃんの隣に腰を降ろし、自分のお弁当を開けた。



「…妙ちゃんは近藤君だけじゃなくて、もっと他の人にも人気があるだろう?」

「そんな事ないわよ。あのゴリラがちょっと目立つからそう感じるだけよ」

「…そうかな」

「どうしたの?九ちゃん、ちょっと今日は変ね」


お弁当を食べる箸を止めて、もう一度こちらを覗き込む。


「僕は、妙ちゃんの邪魔をしてるのかな、と思って」

「じゃま?」

「僕は妙ちゃんが普通に男と付き合あえるようなきっかけを―」

「―九ちゃん」


言いかけた僕を遮って、妙ちゃんが真剣な顔付きで僕に呼びかけてくる。


「……」

「私が一緒にいるの、九ちゃんには迷惑なの?」

「まさか…」

「だったらいいいじゃない。私は九ちゃんが好きなんだから」


「た、妙ちゃん、他の人に聞かれるよ」

「いいわよ、本当の事だもの」


あまりに堂々としている妙ちゃんを見ていると、僕の考えの方が変なのだろうか、と言うような気分になってくる。

こんなに魅力的な君を、本当にこのままにしていていいのだろうか…。



「私は自分の気持ちに正直に、九ちゃんと一緒にいるの」

「うん…」

「だから、その事で九ちゃんが何かの責任を感じることなんてないのよ?」

「そうなのかな…」


こんなに誠実に説明してくれているのに、冴えない返事しか出来ない僕に妙ちゃんはちょっと溜め息を付いた。

こんな情けない自分に、呆れられてしまったのかもしれないと思うと少しドキリとする。

妙ちゃんはしばらくの間、黙って僕を見詰ていたが、やがてゆっくりと口を開く―。



「…でも、そうね。もし九ちゃんが今は一人になりたいって言うのなら、私は席を外してもいいわよ」




そう言うとサッサと自分のお弁当をしまい込み、躊躇いもなく立ち上がる。



いつも優しくしてくれる妙ちゃんに、急に他人のように振舞われ言いようの無い不安が込み上げた。

僕はその不安に押し出されるように、咄嗟に妙ちゃんのスカートの裾を掴んでしまった。



「…九ちゃん?」


「…ごめん」


「………」


「行ってほしくないんだ」


「九ちゃん…」


「ここに居てほしい…。今だけじゃなくて、ずっと…」


やっとの思いでそう告げると、妙ちゃんはニッコリ微笑んで、いきなり僕に抱き付いてきた。


「素直な九ちゃんって、可愛いわ〜」


「わっ、ちょっと、妙ちゃん―」


「やっと本心を言ってくれたのね!」


「た、妙ちゃんってば」


「当たり前じゃない〜。私はずっと九ちゃんの側にいるからね」


「あ、あの、嬉しいんだけど、いくら何でも皆 見てるよ」


「構わないって言ったじゃないの」


「いや、これは構うよ。妙ちゃん、妙ちゃんってば〜〜〜!」









時々不安になる事もあるけれど、僕にはやっぱり妙ちゃんがいないとダメなんだ…。


妙ちゃんと二人なら、そんな不安も乗り越えていけるだろうか―。











4000Hitのリクエストをいただいたので、考えてみましたが…。ひゃ〜、申し訳ありません( ▽|||)
これ全く、学園モノじゃないですね、普段の九妙ですね、いやいや〜、舞台が学校になっただけだという…(笑)

3Zって小説を読んでないので、雰囲気が分からないのですが、九ちゃんの合コン編で妙ちゃんが学級委員だったので、強めのイメージで書きました。
妙ちゃんが強いなら、と言うことで、九ちゃんはちょっとウジウジしてもらいました。
九ちゃんの制服には敢えて一切触れていませんが、これはセーラー服でも学ランでもお好きな方で脳内補足してください(笑)

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